医療現場のAI活用が、製造業の稟議書を変えるヒントをくれた

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
先日、OpenAIが公開している医療向けのAI活用事例を読んだ。
医療とは畑違いなのに、妙に刺さる内容だった。

その記事によると、臨床医がChatGPTを使って診断のサポートや患者記録の作成を行っているという。
しかもHIPAAという米国の医療情報保護法に準拠したかたちで、セキュリティを担保しながら使っているらしい。

ここで私が「おっ」と思ったのは、医療のセキュリティ要件の厳しさだ。
患者の個人情報は、企業の営業データよりはるかに規制が厳格な世界だ。
そこでAIが使われているという事実は、「セキュリティ要件があるからAIはまだ早い」という社内の反論を崩す材料になる。

「セキュリティが心配」に対してどう返すか



私の会社でもAIツールの導入を進めようとすると、情報システム部門から必ず出てくる言葉がある。
「個人情報や機密情報の扱いが心配だ」というやつだ。
これ自体は正しい指摘で、無視はできない。

ただ、医療の現場がHIPAA準拠でAIを使えているという事実は、議論の出発点を変えてくれる。
「AIは使えない」じゃなくて、「どう使えば使えるか」に話を持っていける。
稟議書を書くとき、ここの切り替えができるかどうかが勝負だと思っている。

OpenAIの事例では、臨床医のドキュメント作成にかかる時間を大幅に削減できたという話も出てくる。
医師が記録作業に費やしていた時間を診察に回せるようになったという文脈で語られていた。
製造業の営業に置き換えると、日報や提案書の作成に費やしている時間を、顧客との対話に使えるということだ。
この翻訳作業ができると、経営陣への説明がぐっとやりやすくなる。

事例を「翻訳」して経営陣に見せる



経営陣は「他社事例」を求める。
だが「製造業でのAI営業活用事例」だけを探していると、なかなか刺さるものが見つからない。
むしろ医療や金融など、規制が厳しい業界でAIが定着してきているという話を持ち込むほうが、「それなら我々も検討できるかもしれない」という空気を作りやすい。

部下にも同じことを話している。
「自分たちの仕事に直結する事例だけを探すな」と。
遠い業界の話を自分たちの仕事に引き寄せる力が、DX推進においては特に重要だと感じている。

稟議書で一番苦労するのは、投資対効果の説明だ。
医療現場の事例が示しているのは、「時間という資源をどこに使うか」が変わるということ。
コスト削減というより、人の動き方が変わるという話だ。
このフレームで説明すると、経営陣の反応が変わることが多い。

来週、部内の定例会議でこの医療分野の事例をそのまま共有してみるつもりだ。
「なんで医療の話?」という反応が来るのを楽しみにしている。
そこからどう営業DXの議論に持ち込めるか、自分でも試してみたい。

無料相談受付中

AI開発・DX推進についてお気軽にご相談ください。オンライン30分から。

無料相談を申し込む