AIエージェントが「勝手に判断して動く」時代、社労士はどう立ち位置を変えるか

伊藤 健太
伊藤 健太 40代・ 社会保険労務士
先週、日本オラクルが「Fusion Agentic Applications」というエンタープライズ向けのAIエージェント連携アプリを発表した。財務・人事・サプライチェーンなど22種類のエージェントが連携して、業務を自律的に判断・実行するという内容だ。

これを読んで、正直「あ、いよいよそういう時代になってきたな」と思った。

AIが「指示を待つ」から「自分で動く」に変わってきた



これまでのAIツールは、人間がプロンプトを入力して、返ってきた答えを自分で判断して使う、というスタイルだった。でもFusion Agentic Applicationsは違う。明確な役割・専門性・意思決定権限を持つAIエージェントのチームが、「なぜ・いつ・どのように業務を進めるか」を自律的に判断して動く。人間に判断を仰ぐのは「例外・トレードオフ・重要な意思決定」だけ、とある。

この設計思想、社労士業務に当てはめるとかなりリアルな話になってくる。

給与計算、勤怠データのチェック、算定基礎の集計。毎月顧問先30社分をこなしているけれど、正直これらは「判断する仕事」というより「確認する仕事」の比重が大きい。ルールに従って処理して、例外が出たら人間が見る。それって、今回のAIエージェントの設計とほぼ同じ構図じゃないか。

「例外だけを見る人」が社労士の本来の姿かもしれない



顧問先の経営者から相談を受けるとき、私が一番価値を感じてもらえる場面はどこかと考えると、やっぱり「法改正対応の判断」や「助成金の申請タイミングの見極め」だ。育児介護休業法の改正が続く中で、就業規則をどう変えるか。キャリアアップ助成金の要件が変わったとき、顧問先のどの会社が対象になるか。そういう「例外・トレードオフ・重要な意思決定」の部分だ。

逆に言えば、定型処理をAIが担い、私が例外判断だけに集中できる環境が整えば、今より多くの顧問先を持てるかもしれないし、今の顧問先に対してより深い支援ができるようになる。

Fusion Agentic Applicationsを使うのは大企業の情報システム部門だろうから、自分が直接触るものではない。ただ、大企業の人事部門がこういうツールを持つようになると、社労士に外注していた定型業務を内製化するスピードが上がるのは間違いない。

採用書類の確認、入退社の手続き管理、勤怠の異常値チェック。これらが顧問先の中でAIに置き換わっていったとき、自分は何をする人として顧問契約を継続してもらえるのか。

今月、ちょうど数社から「給与計算のアウトソースをやめてシステムに切り替えたい」という相談を受けていた。このニュースを読んで、その流れはもう止まらないと改めて感じた。

自分がやるべきことは、AIが苦手な「この会社の文化的背景を踏まえた判断」や「経営者との信頼関係ベースのアドバイス」に軸足を移していくことだと思う。次の顧問先訪問では、業務フローの棚卸しを一緒にやってみるつもりだ。どこが「定型処理」で、どこが「例外判断」かを整理するところから始めてみる。

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