生成AIの社内安全対策、稟議に通るレベルってどこから?

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
先日、生成AIの社内安全対策に関する記事を読んだ。公的ガイドをベースにした10の対策がまとめられていて、正直「これ、うちで全部やろうとしたら稟議が何本いるんだ」と苦笑いしてしまった。

うちの部門は今年から営業DXの一環で生成AIツールの展開を進めている。部下に試験的に使わせてはいるものの、セキュリティ部門からは「ガイドラインが整備されるまで本格展開は待て」と言われ続けている。その「整備」の中身が曖昧なまま時間だけ過ぎていくのが、正直一番しんどい。

「どこまでやれば十分か」に答えが出ない問題



記事では対策の一つとして「SSO(シングルサインオン)とMFA(多要素認証)で認証とアクセス制御を企業アカウントに集約する」という話が出てきた。これは実はうちでも以前から検討していた内容だ。ただ、情報システム部門が「既存のID管理基盤との整合性確認が必要」と言い続けて、半年以上止まっている。

もう一つ印象的だったのが「DLPとマスキングで機密情報・個人情報の入力を抑止する」という対策。営業現場では顧客情報をプロンプトに貼り付けようとする場面が実際に起きていた。「便利だから使う」という行動は止められないし、止めるべきでもない。でも何も制御しないまま放置するのも論外だ。この二律背反を経営陣に説明するのが、今の自分の一番の仕事だと思っている。

稟議を通すなら「対策の全体像」と「優先順位」をセットで出す



経営陣に予算申請する際、単に「セキュリティ対策が必要です」と言っても通らない。自分の経験上、通る稟議には二つの要素がある。一つは「やらなかった場合のリスクの具体性」。もう一つは「段階的に実施できるロードマップ」だ。

今回の記事にあった10の対策をそのまま並べて経営陣に見せても、「全部やるのか、予算はいくらか」という話になるだけだ。だから自分は次の整理をして提案に使おうと思っている。

  • まず今すぐできる運用ルールの整備(利用ポリシーの雛形は記事内に公開されているものをベースにする)
  • 次に技術的制御として認証基盤とDLPを優先対応
  • 最後にインシデント対応フローの整備(記事では「連絡網ではなく初動手順に落とす」と表現されていた)


この3段階に分けると、最初のステップは追加コストがほぼかからない。経営陣が「では第一フェーズはすぐ始めよう」と言いやすい形になる。稟議はゴールではなく、動かすための手段だ。

部下への展開前に自分が「説明できる状態」になっているか



記事を読んで改めて気づいたのは、自分が部下に「安全に使え」と言いながら、「安全」の定義を言語化できていなかったということだ。ハルシネーション対策を出力形式に組み込む、プロンプトインジェクション対策を前提に設計する、といった具体的な話は、部下に説明できるレベルで理解していなかった。

DX推進部長という立場上、ツールを選ぶ・予算を取るという役割に目が向きがちだが、使う側が「何が危なくて何が安全か」を判断できる状態にしておくことも同じくらい大事だと思う。来週の部内ミーティングで、利用ポリシーのドラフトを一緒に作る時間を取ってみるつもりだ。部下が自分ごととして考えるきっかけになるなら、1時間使う価値はある。

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