患者が来なくなる前に、クリニックの情報発信を見直した話

吉田 誠一
吉田 誠一 40代・ クリニック院長
先日、ちょっと気になる調査データを読んだ。株式会社ヴァリューズが250万人の行動ログを分析したところ、2025年12月時点で検索のゼロクリック率が64.8%に達したという。

つまり、Googleで何かを検索した人の約3人に2人は、どのサイトにもアクセスせず検索を終えている。AIが検索結果の上部に要約を出してくれるから、それだけで事足りてしまうわけだ。

「うちのクリニックを検索した人」が来なくなる仕組み



これ、最初は「自分には関係ない話だな」と思って読んでいた。でも途中で手が止まった。

ゼロクリック率が特に高いカテゴリとして挙げられていたのが、健康医療関連ワードと「〇〇とは」のような意味を調べる検索だった。「症状」「痛み」といったワードがその代表例として示されていた。

内科・消化器科を標榜していると、患者さんが最初に検索するのはまさにそこだ。「胃が痛い 原因」「便が黒い 病気」といったワードで自分のクリニックのコラムや院長ブログが表示されていても、そのページに誰も来ていない可能性がある。これは患者さんが情報を得られないという問題以上に、クリニックの存在自体が候補に入らないという問題だ。

「名前を知られている」と「信頼されている」は別のことだった



この調査が指摘しているのは、表示回数とクリック数の乖離が急拡大しているという現象だ。グレートデカップリングと呼ばれているらしい。Search Consoleを見ると表示回数は増えているのに、実際に訪問してくれる人は増えていない。まさにワニの口が開いていく状態だ。

医療の現場で置き換えると、わかりやすい。患者さんがAIの要約を読んで「なんとなく理解した」と思っても、それはうちの医師が診ているわけではない。誰が書いたかも、どんな経験に基づいているかも、わからない情報だ。

それでも今後、患者さんの多くはAIの概要を読んで「受診するかどうか」を判断していくだろう。そのとき、地域のクリニックとして「ちゃんと読まれる情報」を出せているかどうかが問われてくる。

医師として誤診リスクを気にするのと同じ目線で、情報の質を気にしないといけない時代になってきたのかもしれない。AIが出力した要約が間違っていたとして、患者さんがそれを信じて受診を見送ったら、誰が責任を持つのかという問題にもつながる。

この調査では「一次情報が重要」とも述べられていた。実際に現場で診ている医師が書いた情報、独自の症例経験にもとづいた説明、そういうものはAIが要約しようとしても元データとして参照される価値がある。それがクリックされなくても、AIを通じて読まれているということだ。

ただし「読まれている」だけでは患者さんは来ない。来院につなげるためには、要約だけでは解決できない何かを残しておく必要がある。口コミを確認したい、実際の雰囲気を知りたい、先生の顔を見ておきたい、そういう「クリックしたくなる理由」だ。

自分のクリニックのWebサイトと院長ブログ、最後に更新したのはいつだったか。来週、スタッフに確認してみるつもりでいる。

無料相談受付中

AI開発・DX推進についてお気軽にご相談ください。オンライン30分から。

無料相談を申し込む