AIが1日1万行のコードを書く時代、社労士の仕事はどう変わる?

伊藤 健太
伊藤 健太 40代・ 社会保険労務士
先日、あるポッドキャストの書き起こしを読んでいて、手が止まった。
Simon Willisonというエンジニアが語った話だ。
「自分は1日に1万行のコードを書ける。そのほとんどが動く」と言う。
しかも、そのコードの95%は自分でタイプしていないと。

エンジニアの話なので、最初は「ふーん」と流しかけた。
でも読み続けるうちに、これは社労士の自分にも直接関係する話だと気づいた。

「ほぼ合ってる」と「ちゃんと合ってる」の間には深い溝がある



Willisonはこう言っている。
「コードは正しいか間違いかがはっきりわかる。でも訴訟書類や文書の場合、正しいかどうかを判断するのはずっと難しい」と。
これ、まさに社労士業務の話だと思った。

就業規則の改定文案をAIに出させると、確かに「それっぽいもの」が出てくる。
読んでいると普通に見える。でも細部に落とし穴がある。
育児介護休業法の最新改正に対応していなかったり、特定の業種特有の慣行が抜け落ちていたり。
AI幻覚に関するデータベースには、すでに1,228件もの事例が蓄積されているそうだ。
ほとんどが弁護士や法律関係者が関わったミスだという。
これは笑えない数字だ。

「自分で使う分には自己責任」という線引きが大事



Willisonが言っていた言葉で、一番刺さったのはここだ。
「自分だけが困るものを作るなら思い切ってやっていい。他の人が使うものを出すなら、一歩立ち止まれ」と。

社労士に置き換えると、こういう整理になると思う。
自分の事務所の業務フローや、内部用のチェックリストをAIで効率化するのは全然いい。
でも顧問先に提出する助成金申請書類や、従業員に配る就業規則をAIのアウトプットそのままで出すのは話が違う。
自分がその内容に責任を持てる状態になってから出す。この順序だけは崩せない。

顧問先の採用担当者から「雇用調整助成金の書き方を教えてほしい」と言われることが増えた。
私自身もAIを使って下書きを出すことがある。でも最終確認は必ず自分でやる。
そこをサボると、後で自分が恥をかくどころか顧問先に迷惑をかける。

「確認する人間」の価値が上がっている



面白いのは、AIが普及したことで「ちゃんと確認できる専門家」の価値が下がるどころか上がっている感覚があることだ。
AIを使えば誰でも就業規則の草案くらいは作れるようになった。
だからこそ、「これは本当に大丈夫か?」と聞ける相手が必要になる。

Willisonも「テストとチェックが今のボトルネックだ」と言っていた。
コードを書くこと自体は速くなった。でも「これは本当に正しいか」を確かめる作業は速くなっていない。
これ、社労士業務と全く同じ構造だと思う。

自分の仕事の価値は「書類を作ること」から「最終的に正しいと判断すること」にシフトしている。
そう腹落ちしたら、AIをどう使うかより、自分の判断力をどう維持するかの方が大事に思えてきた。

あなたの顧問先では、担当者がAIで書いた書類をそのまま提出しようとしているケースはないだろうか。

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