AI検索に飛びつく前に、クリニックが守るべきもの

吉田 誠一
吉田 誠一 40代・ クリニック院長
先日、Web担当者Forumの記事を読んだ。タイトルは「AI検索対応に飛びつくな」というもので、SEOの専門家である辻正浩氏と紺野俊介氏が対談していた。

デジタルマーケティングの話なので、正直なところ自分には関係ないかと思いつつ読み始めた。でも途中で手が止まった。「小手先のテクニックより、今企業がすべきこと」という言葉が引っかかったのだ。

「とりあえず導入」の怖さは、医療でもITでも同じだと思った



AI検索の利用率が8か月で3.5倍に急増したというデータが記事には出てくる。これは博報堂DYグループが出した「AI検索白書2026」の数字だ。変化が速すぎて、多くの企業が「乗り遅れてはいけない」と焦っている、という文脈で紹介されていた。

これ、医療現場でも全く同じ構図だと感じた。AIを使った問診支援、診断補助、予約自動化。次々と新しいサービスが出てきて、「導入しないと時代遅れ」みたいな空気が確かにある。

私のクリニックでは電子カルテはすでに入れている。SS-MIX対応のもので、連携という面では一定の基盤はある。でも、その上にAIを乗せることが本当に患者さんのためになるのかは、まだ答えが出ていない。

「成果」の定義が違うと、判断がズレる



記事の中で印象的だったのは、「流入が減っても成果を実感している企業が8割いる」という調査結果だ。日本SPセンターの調べとして紹介されていた。アクセス数という指標だけを見ていると、実態を見誤るという話だ。

医療で置き換えると、こういうことになる。AIで問診を自動化したら1日の患者対応件数は増えるかもしれない。でも、患者さんが「ちゃんと話を聞いてもらえた」と感じているかどうかは別の話だ。

私が一番気にしているのは、患者対応の質だ。80人を1日で診ていると、どうしても一人ひとりにかけられる時間は短い。だからこそ、AIに任せていい部分と、医師が直接関わるべき部分を間違えたくない。

AIが問診内容を整理してくれるのは助かる。でも、「AIがこう言っていたから大丈夫だろう」という思考が患者側にも医師側にも生まれると、それはリスクだと思っている。誤診の責任は最終的に医師が負う。ここは変わらない。

焦らずに、自分のクリニックの「今」を基準にする



辻氏と紺野氏が言っていたのは、要するに「流行に乗るより自分たちの実態を把握することが先だ」ということだと読んだ。AI検索対応という文脈での話だけど、本質は業種を問わないと思う。

クリニックで言えば、まず確認すべきは「どの業務が本当に負担になっているか」だ。レセプト入力、予約管理、電話対応、問診の記録。スタッフ12人全員に聞いたら、答えがバラバラかもしれない。

妻は看護師長として現場を見ているが、私とは違う場所にボトルネックを感じているだろう。AI導入の前に、その会話をちゃんとしたことがあるかと聞かれると、正直あまりできていない。

まずそこから始めようと思う。来月、スタッフ全員と業務の困りごとを棚卸しする時間を作るつもりだ。AIの話はその後でいい。

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