生成AIの「仕組み」を知ると、顧問先への説明が変わった

伊藤 健太
伊藤 健太 40代・ 社会保険労務士
先日、インプレスから出ている『エンジニアなら知っておきたい生成AIのキホン』という本を手に取った。著者は水谷享平さんで、320ページ、2,640円の本だ。

タイトルに「エンジニアなら」とあるから、最初は自分には関係ないかなと思った。でも目次を見たら「プロンプトの書き方」「RAGとエンべディング」「いろいろな生成AIを試してみる」という章があって、結局読み始めてしまった。

社労士にとって「仕組みを知る」はどんな意味があるか



顧問先から「ChatGPTって就業規則の作成に使えますか?」と聞かれることが増えた。1年前は月に1〜2件だったのに、今は週に1件ペースで来る。

正直なところ、以前の自分は「使えますよ、でも最終確認は必要です」くらいしか言えなかった。なぜそういう注意が必要なのか、うまく説明できていなかった。

この本を読んで、少しだけ答えられるようになった気がする。ChatGPTが「もっともらしい文章を生成する仕組み」である以上、労働法の最新改正を自動で反映してくれるわけではない。モデルの学習データには時間的な限界があるからだ。

顧問先に「AIが書いた就業規則をそのまま使うのは危険です」と伝えるとき、「なんとなく危ない気がするから」ではなく、こういう背景から説明できると説得力が違う。

助成金申請の書類作成にも同じことが言える



雇用調整助成金や人材確保等支援助成金の申請書類を顧問先に代わって準備することがある。書く量が多くて、特に「事業計画の概要」や「取組内容の説明」あたりは毎回時間がかかる。

ここにAIを使いたいという気持ちはずっとあった。ただ、どこまで任せていいのかが曖昧なままだった。

この本の第11章「プロンプトの書き方」と第8章「インコンテキスト学習とファインチューニング」を読んで、AIへの指示の出し方次第で精度がかなり変わると改めて確認できた。「〇〇助成金の申請書類を書いて」ではなく、背景情報・制約・出力形式まで一緒に渡すことが大事だと。これは今すぐ変えられる話だ。

採用関連の書類も同じで、求人票の文言を顧問先と一緒に作るとき、AIに「この会社の特徴」「想定する応募者像」「掲載媒体の文字数制限」を全部渡してから書かせると、ゼロから書き直す手間がぐっと減る。

「使う」と「理解する」の間にある差



この本が面白いのは、専門家向けに書かれていないところだ。「エンジニアではない人でも理解しやすい構成」と書いてある通り、Transformerモデルの説明も図を使いながらで読み進めやすかった。全部わかったとは言えないけれど、「なぜChatGPTとGeminiで同じ質問への答えが違うのか」くらいは腹落ちした。

自分は生成AIを「業務を速くする道具」として見てきたと思う。でも顧問先から質問を受けるたびに、道具の説明書を読まずに使っている感覚があって、それが引っかかっていた。

今週、ある顧問先の社長から「うちの経理担当にもAIを使わせたいんだけど、何から始めればいい?」と相談を受けた。以前なら「まずChatGPTを試してみてください」とだけ言っていた。今なら「何の業務に使うかによって向き不向きがあるので、一度整理しましょう」と返せる。

まず自分の手元の業務、給与計算の補助説明文とか採用書類の初稿作成から、プロンプトの渡し方を変えて試してみるつもりだ。

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