生成AI稟議が通らない本当の理由と突破口

木村 俊介
木村 俊介 30代・ スタートアップ創業者
先週、知り合いのスタートアップCEOから連絡が来た。「Microsoft Copilotを全社導入しようとしたら、法務と情シスの確認が終わらなくて3ヶ月止まってる」という話だった。

8人規模で3ヶ月止まるのは、正直きつい。うちも似たような経験があるから、他人事じゃなかった。

稟議が止まるのは法務が悪いわけじゃない



生成AI導入で法務が見ているポイントを整理した記事を読んだ。著作権侵害(類似性・依拠性)のリスク、個人情報保護法への抵触、事業秘密の漏洩、そしてハルシネーションによる責任問題など、7つの論点が挙がっていた。

読んでみて思ったのは、法務が慎重になるのは当然だということ。論点の数が多いし、判例もまだ少ない領域だから、「とりあえず止めておく」という判断になりやすい。責める話じゃない。

ただ、AI・DX推進担当者が「使いたい」と言うだけで稟議に出しても、法務側には検討材料が何もない状態になる。そこで止まるのは構造的な問題だと思う。

突破口は「論点を先に渡す」こと



この話、採用や資金調達と同じ構図だと気づいた。投資家に「うちのプロダクトは良い」と言っても刺さらない。相手が気にしているリスクと、それへの回答を先に出すから話が前に進む。

法務対応も同じで、推進側が「使いたいツールの利用規約とセキュリティ仕様を確認済み」「入力データに個人情報を含めないルールを決めた」「ハルシネーション発生時の責任範囲を事前に社内で定義した」という状態で稟議を出すと、法務の仕事量が劇的に減る。

記事で紹介されていた4ステップのチェック手順も、読んでいて「これは推進側がやる仕事だ」と思った。ユースケースと入力データの洗い出し、ツールの規約確認、社内ガイドライン策定、モニタリング体制の構築。法務に丸投げするんじゃなく、推進側が素案を持って相談しに行くスタイルにすると、明らかにスピードが変わる。

実際、うちでClaudeを全社導入したときもそのやり方だった。自分で利用規約の日本語訳を読んで、「学習に使われるか」「データがどこに保存されるか」を確認してから話を通した。先に論点を潰しておくと、法務からの戻しがほぼなかった。

投資家向けの説明にもなる



もう一つ気づいたこと。AI活用のガバナンス体制を整えておくと、投資家への説明でも使える。

「ChatGPTを使っています」で止まるんじゃなく、「社内ガイドラインを整備して、入力データの分類ルールと、著作権侵害リスクへの対応方針を定めています」と言える状態にしておく。スタートアップでここまでやっている会社は少ないから、ガバナンスの成熟度として差別化になる。

規模が小さいからこそ、今のうちにちゃんと設計しておくほうがいい。スケールしてからルールを作るのは、思っているより大変だ。

法務との連携で詰まっている会社は、まず「7つの論点に対して推進側が素案を作る」というアプローチを試してみてほしい。稟議のスピードが変わると思う。

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