NBA中継のマイク配置から学ぶ「見えない設計」の話

木村 俊介
木村 俊介 30代・ スタートアップ創業者
NBAの中継映像を見ていて、ふと気になった記事を読んだ。コートのリング周辺に仕込まれたマイクが、あの「スウィッシュ」という音を作り出しているという話だ。

NBCのシニア・オーディオエンジニアであるベン・マイチャクザク氏によると、リング付近だけでDPAの「4060」、AKGの「C411」、ゼンハイザーの「MKH 416」など複数のマイクが役割分担して設置されている。さらにコート全体では120台以上のデバイスがネットワークに接続されているという。それだけの仕掛けがあって、あの「臨場感」が生まれている。

「見えない設計」が体験を作る



読んでいて思ったのは、これって自分たちのプロダクトと同じ構造だということだ。ユーザーが「使いやすい」と感じる瞬間の裏側には、誰にも気づかれない設計が山ほどある。気づかれないから良い、という話でもある。

中継に話を戻すと、マイチャクザク氏は「マイクの本数や配置を減らすと中継の迫力が小さくなる」と言っている。少数のマイクだけでは、会場の熱量を視聴者に伝えられないと。これ、まさにプロダクトのPMFを探っている時期の感覚に近い。削れば確かにシンプルになる。でも何かが死ぬ。

自分がCEOとしてよくやる意思決定に「どこを削るか」がある。8人という規模だと、機能もオペレーションも常に取捨選択の連続だ。でもNBAの現場が教えてくれるのは、「削る前に、それが何を支えているかを把握しろ」ということだと思う。

投資家に説明できる「構造」を持っているか



もう一つ刺さったのが、5.1サラウンドでミックスした音を「スマホのスピーカーで聞いても自然に聞こえるか確認している」という部分だ。最高の体験を設計しながら、同時に最低環境での体験も担保する。投資家向けのピッチにも同じことが言えると思った。

「理想的な環境でのデモ」だけ磨いても意味がない。先月、あるVCのパートナーから「御社のプロダクト、現場の担当者レベルが使ったらどう見える?」と聞かれた。ちゃんと答えられなかった。スマホのスピーカーでの確認を怠っていた、ということだ。

ユーザーが「なんとなく良い」と感じる体験の裏に、120台のデバイスが動いている。そういう設計の積み重ねが、競合との差になる。うちのプロダクトに置き換えると、ユーザーが「なんとなく使いやすい」と感じている部分の構造を、自分は言語化できているだろうか。

来週のチームミーティングで、一度この問いを出してみるつもりだ。「うちの体験の裏側にある見えない設計、全員が説明できるか?」という問いとして。

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