AIが「待ち時間」を削る時代、稟議にどう乗せるか

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
先日、OpenAIのブログ記事を読んでいて、少し立ち止まって考えさせられた。

OpenAIが開発したCodexというAIエージェントの話だ。このエージェントがどうやって処理速度を上げたかというと、WebSocketという通信技術と「接続スコープのキャッシュ」の組み合わせで、APIの通信オーバーヘッドを大幅に削減したというものだった。要するに、AIが何かを考えて行動するたびに発生していた「無駄な待ち時間」を構造的に取り除いたということだ。

技術の詳細はエンジニアに任せるとして、自分が気になったのは別のことだ。「AIがループしながら仕事を進める」という仕組みが、いよいよ実用レベルの速度で動き始めている、という事実の方だった。

「AIが遅い」という言い訳が使えなくなってきた



うちの部門でも昨年からAIツールをいくつか試している。営業の日報作成や提案書のたたき台生成あたりだ。正直、現場の反応は「便利だけど、ちょっと遅い」という声が多かった。AIに指示を出して、結果が返ってくるまでの数秒から十数秒。その微妙な間が、現場の人間には思ったより心理的にきつかったようだ。

だから今回の記事を読んで、「ああ、この課題がインフラレベルで解決されつつあるのか」と思った。WebSocketで常時接続を維持して、接続単位でキャッシュを持つ。これによってCodexエージェントのモデルレイテンシが改善された、という話は、現場の体感速度に直結する話だ。

経営陣への説明でよく詰められるのが「で、実際に何が変わるんですか?」という問いだ。コスト削減なのか、売上貢献なのか、それとも工数削減なのか。今まで「AIで業務効率化」という言い方をすると、「それ、具体的には?」と返されて言葉に詰まることがあった。

稟議の通し方が変わってきた実感



最近は少し変えている。「AIツールを入れます」ではなく、「AIエージェントが連続して判断しながら仕事を回す仕組みを試します」という切り口にした。そのうえで、「応答速度がXX秒短縮されると、1日XX件の商談対応で月間YY時間の削減になる」という試算を添える。

OpenAIのCodexの事例は、まさにこういう説明の根拠として使えると思った。単なる「チャットAI」ではなく、エージェントが自律的にループしながら処理を進めるという概念。そしてその実用化に向けて、通信レイヤーから最適化が進んでいるという事実。これは「AI投資は本格的な実用段階に入っている」という主張の裏付けになる。

経営陣の中には、まだAIを「高度なオートコンプリート」くらいに思っている人もいる。でもエージェントループという概念を持ち出すと、「これはワークフローそのものが変わる話だ」という理解につながりやすい。説明の切り口として、今後使っていきたいと思っている。

セキュリティの懸念は引き続き丁寧に向き合う必要がある。WebSocketによる常時接続は、社内のセキュリティ部門から必ず突っ込まれるポイントになるはずだ。ここは事前に情報システム部門と一緒に整理しておく必要がある。

自分は来月の部門会議で、今年後半のAIエージェント導入計画の骨子を提案するつもりだ。その資料の冒頭に、「AIの応答速度は構造レベルで改善されている」という話を一枚入れることにした。現場の「遅い」という懸念を先に潰しておくためだ。準備を始めよう。

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