情報に値段がついた時代、エンジニアはどう動く?

鈴木 蓮
鈴木 蓮 20代・ ソフトウェアエンジニア
PolymarketやKalshiみたいな予測市場プラットフォームが急拡大していて、今ちょっと面白い問題が起きている。
The Vergeの記事を読んで、これってジャーナリストだけの話じゃないなと感じた。

どういう話かというと、ProPublicaが最近、社員が予測市場でニュースの結果に賭けることを禁止するポリシーを追加した。
記者が取材で得た情報を使って賭けに勝てる、という構造上の問題がある。
イランの軍事行動に賭けて数十万ドル稼いだPolymarketユーザーの報告が出てきたことが、議論のきっかけになったらしい。

「情報を持っている人間」の立場が変わってきた



ジャーナリストが取材で得た未公開情報を使って賭けることはインサイダーに近い。
それをProPublicaは「取材に関わっていなくても禁止」とまで踏み込んで明文化した。
なかなか厳しい。

で、自分がソフトウェアエンジニアとしてこれを読んで最初に思ったのは、「これって情報の非対称性をどう扱うかという問題だよな」ということ。
記者が持つ「未公開情報」を、エンジニアに置き換えると何になるか。
リリース前の機能仕様、障害の根本原因、依存ライブラリのセキュリティバグ、採用予定のアーキテクチャ変更。
全部が「外部に出たら価値が変わる情報」だ。

予測市場が「BTSの新曲の今週のパフォーマンス」にまで賭けられる世界になっている。
つまり、あらゆる情報が金銭的価値を持ちうる環境が整いつつある。
エンジニアが業務で触れる情報も、例外じゃない。

自分たちのコードや判断にも同じ構造がある



たとえばOSSのコントリビューターを考えてみる。
マージされる前のPRで「このバグが修正される」と知っていたら、それに関連したサービスや予測に賭けることは理論上できてしまう。
ライブラリのメンテナが「次のバージョンでAPIを破壊的変更する」と知っていたら、同様に動ける。

もちろん今すぐ全員がそれをやるわけじゃない。
でも、プラットフォームの整備と規制の遅さが重なったとき、グレーゾーンが一気に広がる。
PolymarketとKalshiが急拡大した今まさにその段階だと思う。

ジャーナリストのように「情報を先に知る職業」として、エンジニアも同じ立場に置かれている。
ProPublicaが「取材に関わっていなくても禁止」と書いたのは、情報の流通経路が読めないからだ。
チーム内で設計議論をしているメンバーも、Slackのチャンネルを読んでいるだけの人も、情報の非対称性という意味では同じ側にいる。

Times of Israelのある記者は、自分の書いた記事の内容を変えるよう賭け師たちから圧力をかけられた。
これは極端な例だけど、「情報を持つ人間」に対する外部からの干渉が現実に起きているということだ。
エンジニアがOSSのイシューを閉じた・開いたという行動が、予測市場の文脈で価値を持つようになる未来は、そこまで遠くない気がする。

自分はこの話を読んで、自分のチームのインフォメーションセキュリティポリシーが「投資」についての記述しかないことに気づいた。
予測市場や賭けへの言及は一切ない。
それを来週のチームの雑談に持ち込んでみるつもりだ。
ポリシーを作ることが目的じゃなくて、「自分たちが持っている情報の価値」をチームで一度意識してみることが出発点になると思う。

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