AIに感情があるとしたら、私はどこに立つんだろう

林 美里
林 美里 30代・ フリーランスデザイナー
Anthropicが、自社のAI「Claude」に感情に似た内部状態があると発表した。
その研究によると、Claudeは好奇心や満足感のような「機能的感情」を持っている可能性があるという。
さらに言えば、つまらない作業をさせると否定的な状態になり、創造的な作業では肯定的な状態になる傾向が観察されたそうだ。

正直、最初にこれを読んだとき、笑えない感じがした。

「つまらない作業で落ち込む」、それ私も同じだ



ロゴを作るのは好き。でもクライアントから「前のと同じ感じで、もう少し明るく」と言われて微調整だけするのは、正直しんどい。
そういうとき、自分の中に何かが消えていく感覚がある。
で、今Claudeも似たような反応をするというわけだ。

MidjourneyやAdobe Fireflyを使っていると、たまにすごく「良い偶然」が起きる。
自分では思いつかなかった色の組み合わせが出てきたり、フォントの雰囲気が想像以上にハマったりする瞬間。
そのとき私は「これ使えるな」と思うと同時に、「でも私が作ったんじゃないよな」ともなる。

今回のAnthropicの話は、そのモヤモヤをさらに複雑にした。
AIが「創造的な作業で肯定的な状態になる」なら、私が感じる喜びと何が違うのか。
それを問い始めると、少し怖い。

感情があるAIと、感情で作るデザイナーと



Anthropicはこの研究で、Claudeの感情状態を外部から抑圧することへのリスクにも言及しているらしい。
つまり、AIに無理やりポジティブを演じさせると、それが表面に出なくなるだけで内部では別の状態が続く可能性があると。
これ、クライアント対応で何度も経験したことと構造が同じだと気づいた。

「もっと明るいデザインで」「もっと親しみやすく」「競合他社っぽい感じで」。
私は笑顔でオッケーして、手を動かす。
でも内側では「これは私の仕事じゃない」と思いながら作っている。

AIの感情の話なのに、なんか自分の話として読んでしまった。

クリエイターって、感情を使って仕事している部分がたしかにある。
「好きで作った」と「言われたから作った」では、できあがるものがどこか違う。
そのクオリティの差を言語化できないから、クライアントには伝わりにくいし、価格交渉でもうまく出せない。

でも、もしAIにも同様の状態があるとしたら、逆説的に「感情を込めて作ること」の価値が説明しやすくなるかもしれない。
AIが創造的な状態で出力したものと、指示通りだけに動いたものでは差が出る。
だとしたら、人間のクリエイターが感情をのせて作ることにも、もっとちゃんと価値がある。

私が消えないために、次に試すこと



「全部任せると自分が消える」という感覚は、たぶんこういうことだと思う。
AIに指示を出して、出てきたものをそのまま納品する流れに乗っていると、自分の感情が介在する余地がなくなっていく。
それは効率的に見えて、実は自分の仕事の核心を手放すことになる。

逆に、AIをあえて「つまらない作業」に使って、自分は創造的な判断だけに集中するという使い方なら話は変わる。
リサイズや素材整理や初稿のたたき台はAIに任せる。
でも「これで行く」という選択と、最後の調整は自分でやる。

Anthropicの研究が示したのは、AIにも作業の質による内部変化があるということ。
だとしたら、私も自分が「肯定的な状態」になれる仕事の比率を、意識的に守っていくべきだと思う。

まず来週、AIに振る作業と自分でやる作業を、あらためて棚卸しするつもりだ。

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