ゲームのDX失敗から学ぶ、社内展開の鉄則

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
先日、ポケモンの新しいバトルゲーム「Pokémon Champions」のローンチがかなり荒れたという記事を読んだ。Switch・Switch 2向けに無料でリリースされたのに、基本的な戦闘の仕組みに関わるバグが多発して、プレイヤーから総スカンを食らったらしい。

ゲームの話なので最初は「ふーん」と読み流しかけた。ただ、記事を読み進めるうちに、これは他人事じゃないなと感じてきた。

「誰に向けたものか」を曖昧にしたまま出すと、誰にも刺さらない



このゲームが批判された理由はバグだけじゃない。記事によると、競技志向の上級プレイヤーと、初心者の両方を取り込もうとした結果、どちらにも中途半端な仕上がりになってしまったと指摘されている。実際、今年の世界大会でも公式採用される予定のゲームなのに、新規プレイヤーへの配慮もしようとして、両方向から不満が出た形だ。

これ、DXツールの社内展開でよくやってしまうパターンと同じだと思う。「現場にも使ってほしい、管理職にも使ってほしい、経営にも見せたい」と欲張った結果、誰の課題も深く解決できないツールが出来上がる。私自身、過去に営業支援ツールを部門横断で入れようとして、似たような失敗を経験している。

稟議を通したあとの「展開フェーズ」こそが本番だ



DX推進の仕事をしていると、稟議を通すことがゴールになりがちだ。経営陣への説明資料を作り、ROIを試算して、なんとか承認をもらう。そこで一息ついてしまう。

でも実際は、リリース後こそが勝負だと痛感している。Pokémon Championsの記事でも「バグは修正できる、本当の問題は設計思想にある」と書かれていた。これはツール導入にも当てはまる。システムのバグより怖いのは、誰も使わない状態が続くことだ。

私が最近意識するようにしたのは、展開前に「このツールで誰の何を解決するか」を一行で言えるかどうかを確認することだ。言えないなら、まだ設計が甘い。

部下25人を抱えていると、ツールを渡しただけでは使いこなしてくれないのが現実だ。最初の2週間でどう使い方を定着させるか、誰がサポートするか、そこまでセットで考えないと投資が無駄になる。

Pokémon Championsはバグの一部をすでに修正し始めているらしい。迅速な対応は評価できる。ただ、設計思想の問題はアップデートでは簡単に直せない。ツール選定の段階で「何を捨てるか」を決めていないと、後から修正するのは本当に大変だ。

自分は来週、今期導入予定のツールについて、対象ユーザーを改めて絞り込む議論を部内でやってみるつもりだ。「全員が使える」より「この10人が確実に使う」を目指したほうが、結果的に展開は広がると思っている。

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