AIエージェントにガバナンスを持たせる、という発想

吉田 誠一
吉田 誠一 40代・ クリニック院長
GitLabがGoogle CloudのVertex AIと連携した、というニュースを読んだ。正直、最初は「ソフトウェア開発者向けの話だな」と思ってスクロールしかけた。でも少し読み進めたら、自分のクリニック運営と重なる部分があって手が止まった。

「エージェントが動いても、ガバナンスは損なわれない」



この一文が刺さった。GitLab Duo Agent PlatformのAIエージェントは、開発者が普段使っているアクセス制御・承認ルール・監査ログと同じ仕組みで動く。タスクをAIが引き継いでも、誰が何をいつ承認したかの記録は残り続ける、という設計だ。

これを読んで、うちの電子カルテ運用を思い浮かべた。SS-MIX対応の電子カルテを導入してから、記録の標準化はずいぶん楽になった。でも今後AIが「次の処置を提案する」「問診を自動で整理する」という役割を担い始めたとき、誰がその判断に責任を持つのかという問題は消えない。むしろ大きくなる。

医療の世界では、AIが何かを判断・提案した場合でも、法的責任は医師にある。これは今のところ変わっていない。だからこそ「AIが動いた痕跡が追える仕組み」は、ソフトウェア開発だけじゃなく、医療現場でも本質的な話だと思う。

自分のクリニックに置き換えて考えると



今、うちで一番負担が大きいのは問診の転記とレセプトの確認作業だ。妻もスタッフも、1日80人の患者対応をこなしながら、夕方以降にこれをこなしている。ここにAIを入れたい気持ちはある。でも怖いのは「AIが何かを変えたのに、それが見えない」状態だ。

GitLabの仕組みで言えば、AIエージェントの操作履歴がアクセス制御と一体化して残る、という部分がポイントだ。Google Cloudのユーザーは、既存の契約・統制の枠組みに沿ってGitLabの使用量まで管理できる。つまり「後から追える」「既存のルールの中で動く」という二点が確保されている。

医療AIに置き換えると、これは「AIが提案したのか・医師が判断したのか」が記録に残ること、そして「既存の医療安全の枠組みの中でAIが動くこと」に相当する。これがないシステムには、正直まだ信頼を置けない。

今の医療AIサービスの多くは「便利さ」を前面に出してくる。でも私が気にするのは、何かが起きたときに「あのAIの提案が原因だ」という状況になったとき、院長としてどう説明できるかだ。カルテの記録と、AIの動作ログが一致して残っていることが、最低限の条件だと思っている。

GitLabの今回のアップデートは、ソフトウェア業界の話だ。でも「AIに仕事を任せながら、ガバナンスをどう保つか」という問いは、医療にもそのまま当てはまる。自分はこれを機に、今使っている電子カルテベンダーに「AIによる操作や提案の履歴がどう記録されるか」を改めて確認してみるつもりだ。

無料相談受付中

AI開発・DX推進についてお気軽にご相談ください。オンライン30分から。

無料相談を申し込む