AIに仕事を奪われる前に、私が決めた「渡す範囲」

林 美里
林 美里 30代・ フリーランスデザイナー
先日、AI導入の効果についてまとめた記事を読んだ。業務効率化・コスト削減・品質向上・意思決定の高度化・人手不足解消という5つの効果が整理されていて、「そうだよな、使わないと差がついていくよな」と改めて感じた。

でも正直、読みながらずっとザワザワしていた。

「使わないと負ける」は本当にそうだと思う



MidjourneyやAdobe Fireflyを実際に業務で使い始めて、もう1年以上になる。最初は「試しに」という感覚だったけど、今はロゴのラフ案出しやムードボード作りに普通に組み込んでいる。スピードは明らかに変わった。以前なら半日かけていた方向性の整理が、1〜2時間で終わるようになった。

記事にも「定型業務を自動化し生産性を向上できる」とあって、それは本当にそうだと思う。私の場合、ラフ出しというクリエイティブな工程でさえ「定型化できる部分」があったんだと気づかされた。

ただ、そこで止まれないのがデザイナーという仕事の複雑なところで。

全部任せると、私が消える気がする



先月、ブランディングの仕事でクライアントからこんなことを言われた。「このロゴ、AIで作ったんですか?」って。褒め言葉のつもりだったと思うけど、正直ちょっとした刺さり方をした。

AIが出したアウトプットに自分のセンスを乗せて仕上げたものなのに、「AIっぽい」と見られた。それが何か悔しかった。

記事には「ヒューマンエラーを防止し品質を安定させられる」という効果も書かれていた。品質を安定させることと、個性を出すことは、実は相性が悪い。安定はある種の均一化でもある。

私がクライアントに選ばれてきた理由って、均一じゃないからだと思っている。活版印刷が好きで、手の跡が残るものに美しさを感じている自分が、AIの滑らかさに飲み込まれていくような感覚があった。

じゃあ「どこまで渡すか」を自分で決めるしかない



悩んだ末に今やっていることは、工程ごとに「渡していい場所」と「絶対に渡さない場所」を自分なりに決めることだ。

ラフ案の量産・配色の比較検討・参考画像の整理、この辺はAIに任せる。逆に、クライアントと最初に話す「そのブランドが何者か」を言語化するプロセスと、最終的な判断は自分でやる。そこが抜けると、本当に自分が消える。

記事には「膨大なデータを短時間で分析できる」という点もあった。確かにそれはAIが圧倒的に得意な領域だ。でもデザインの場合、分析の前に「何を分析するか」を決める感度が必要で、そこは人間の経験値がまだ物を言う場面だと思っている。

AIツールを「使わないと競合に負ける」は本当だと思う。でも「全部任せると自分が消える」も本当だ。この2つはどちらかが正しいわけじゃなくて、両方同時に正しい。

だから今の自分にできることは、自分の仕事の中で「ここだけは渡せない」という場所を言語化し続けることだと思っている。それができていれば、ツールが何であれ自分の仕事として成立する気がしている。

あなたは自分の仕事の中で、AIに渡せる場所と渡せない場所、整理できているだろうか。

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