資料作成のAI化、うちはこう判断した

木村 俊介
木村 俊介 30代・ スタートアップ創業者
結論から言うと、投資家向けデックと採用ピッチはAIで下書きを作り、セールス提案書は人間がスクラッチで書く体制に今年Q2から切り替えた。

きっかけはAINOWの記事だった。生成AIでできることとして「構成案・アウトライン作成」「スライドの自動生成」「文章の要約・リライト」が列挙されていて、うちの資料作成フローを頭の中で当てはめながら読んだ。8人チームで月に出る資料の種類は大体こんな感じだ。

  • 投資家向けピッチデック(月1〜2回更新)
  • 採用候補者向けカルチャーデック(四半期ごと)
  • エンタープライズ向けセールス提案書(商談ごと)
  • 社内KPIレビュー資料(週次)


このうち投資家向けと採用向けは、伝える内容の骨格がほぼ固定されている。PMF進捗・MRRの伸び・チームの構成。毎回同じ問いに対して同じ構造で答えるだけなので、Claudeに「前回のデックのメモとKPIの最新値を渡して、構成案を出してもらう」というフローが即ハマった。体感で1本あたり2〜3時間削れている。

ROIで考えると話は単純だ



自分の時給換算を仮に1万円とする。2時間削減で2万円。月2本なら4万円。Claudeのコストは月数千円。ROIとして議論する余地がない。ただしここで注意したのは、出力をそのまま使わないという前提を崩さないことだ。AINOWの記事でも「誤情報のリスク」と「機密情報の入力に注意」という点が明示されていた。うちでは社外秘の顧客データはAIに渡さないというルールを明文化している。

セールス提案書だけ人間スクラッチにしている理由は、ROIではなく勝率の問題だ。エンタープライズ商談では、相手の業務フローや組織の痛みをどれだけ拾えているかが成約率に直結する。AIが出してくる「型通りの提案書」はそこが弱い。競合もAIを使い始めた今、逆に人が書いた提案書の方が差別化になるという判断だ。

採用ピッチをAI化したら起きたこと



カルチャーデックの更新をAIに任せてから、面白いことが起きた。エンジニア候補のAさん(30代・前職メガベンチャー)から「このデックの解像度が他社と違う」と言われた。実は構成はAIが叩きを作り、自分がファクトを差し込んで仕上げた資料だった。AIが「この段落に数値を入れた方がいい」と示唆した箇所に、直近のNPS・エンジニア一人当たり売上を入れたのが効いたらしい。

妻に「AIで採用資料作るのって候補者に失礼じゃない?」と聞かれたことがある。正直、最初は自分も少し気にしていた。でも考え方を変えた。AIは構成の提案をしているだけで、数値も言葉もぜんぶ自分が入れている。代わりに浮いた2時間で候補者との1on1を1回増やせる。その方がよほど誠実だ。

今やろうとしているのは、週次KPIレビュー資料の自動化だ。データソースからClaudeがサマリーを作り、そのまま社内Notionに流し込む仕組みを来月中に組む予定でいる。これが回れば週次で30分、年間で25時間以上が返ってくる計算になる。その時間をGTM戦略の見直しに使う。チームが8人しかいない今、CEOの時間配分は直接PMFの速度に影響する。だから資料作成のAI化は生産性の話ではなく、PMFの速度の話だと自分は捉えている。

ツールを8個並べて「どれを選ぶか」という議論より先に、自社の資料をタイプ別に分類して「どこが自動化できるか」を考えた方が話が早い。

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