人事AIの普及が示す、次の有望セクター

松田 翔
松田 翔 40代・ 個人投資家
求人票の自動生成、研修資料の作成、評価コメントの下書き。AINOWの記事を読んで、まず頭に浮かんだのは「ヒット率の高い銘柄群」だった。人事部門という、あまり技術的に見えない領域にまで生成AIが深く入り込んでいる。これは市場的には重要なシグナルだと読んでいる。

AIの導入が「エンジニア向けツール」から「ホワイトカラーの全領域」へ広がるフェーズに入ったということだ。採用・評価・人材配置・研修といった人事業務の5つのシーンがそのまま使えるプロンプト例と一緒に解説されている記事だった。内容そのものはターゲット読者である人事担当者向けで、自分には直接関係しない。ただ、これを投資の文脈で読むと、かなり示唆に富む。

エンタープライズ導入の加速が意味するもの



人事部門は経営に近い割にシステム化が遅れているセクターだ。そこに生成AIが食い込んでいる。これは「BtoB SaaSとLLMの融合」という流れの加速を示している。ServiceNow や Workday がここ1年でAI機能を矢継ぎ早に追加しているのは偶然ではない。国内でも SmartHR や freee がAI機能のロードマップを前倒しにしている。こうした動きは、単なるプロダクト改善ではなく、ARR(年間経常収益)への直接的な押し上げ要因として市場が織り込み始めている。

証券会社にいた頃、人事ソフトウェア系は「地味で動かない」という扱いだった。成長率は低く、バリュエーションも抑えめ。ところが今は違う。AI機能の有無でロゴ獲得率が変わり、チャーンレートにも差が出始めている。バリュエーション的にはまだ割安水準にある銘柄もある。

シナリオ別に整理すると



今の自分のポジションは、LLM基盤側(ミッドキャップのモデル提供企業)に少し偏っている。ただ、人事AIのような「業務特化型LLM活用」が広がると、アプリケーションレイヤーの方がキャッシュフローの安定性は高い。以下が今考えているシナリオだ。

  • 強気シナリオ:エンタープライズ導入が想定より早く、HRテック各社のARPU(ユーザー単価)が20〜30%拡大。バリュエーションに上値余地。
  • 中立シナリオ:導入は進むが競合乱立で価格競争に入り、利益率が横ばい。株価は材料出尽くし。
  • 弱気シナリオ:AIの精度問題や個人情報リスクが顕在化し、規制議論が先行。一時的な調整。


今の段階では中立寄りの強気シナリオを基本線として見ている。HRテックのリプレース需要は実需として確かに存在する。問題は「それをどの企業が取るか」という配分だ。

証券時代の同僚で、今も独立して機関投資家向けにレポートを書いている奴から先週連絡があった。彼もちょうど「エンタープライズAI×HR」のテーマでスクリーニングをかけていたらしい。「面白い時期だよな」という話で終わったが、同じアングルで相場を見ている人間が増えているということでもある。

ランニング中にポッドキャストで今期の決算トレンドを聞いていても、AIを軸にしたコスト最適化の話題は増えている。それが人事領域まで拡がっているなら、テーマとしての賞味期限はまだ長い。週末に子どもを迎えに行く前に、国内HRテック銘柄のスクリーニングを一回回してみるつもりだ。

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