お客さんがAIで完結してしまう時代に、居酒屋はどう戦う?

中村 恵
中村 恵 40代・ 飲食業・経営者
先週、常連のお客さんから「最近さ、どこ行こうか迷ったらAIに聞くんだよね」って言われた。ちょっと笑えない話だ。うちみたいな3店舗規模の居酒屋が、AIに名前すら出てこなければ、そもそも候補に入れてもらえない。

お客さんがサイトに来る前に答えが出てしまう



アドビが「Adobe Brand Visibility」っていうツールを発表したらしい。読んでいてドキッとしたのは、「顧客が企業サイトを訪れる前にAIで完結してしまう」という一文だ。これ、居酒屋でもまったく同じことが起きているんだと思う。「渋谷で個室がある居酒屋おすすめ」って誰かがChatGPTに聞いたとき、うちが出てくるかどうか。食べログやGoogleマップの星の数よりも、そっちのほうが先に怖くなってきた。そのツールはChatGPTやGoogleのAIモード、Perplexityなど複数のAIで自分の店が言及されているかどうかを測れるらしい。世界最大規模で約3億件のAI検索プロンプトを分析しているというから、データの規模が段違いだ。うちには到底手が届かないツールかもしれないけれど、「AIに言及されているか」という視点自体は、小さな店でも意識しないといけない話だ。

インスタは毎週更新している。料理の写真、季節のおすすめ、スタッフが仕込みをしている裏側。フォロワーは3店舗合計でやっと1,500人ちょっとだ。それでも投稿を続けているのは、Googleに情報を拾ってもらえる可能性があるから、っていうのが正直なところだ。でも今は、その先にAIがいる。Googleが拾った情報をAIがまとめて、お客さんに答えとして出す。つまり私の投稿がAIに「読まれているかどうか」が、これから効いてくるということだ。

現場の話をAIに教え込むと何かが変わるかも



先月、バイトの子が辞めたタイミングで、採用の文章をChatGPTに手伝ってもらった。「居酒屋 アルバイト 募集 未経験歓迎」みたいなよくある文言じゃなくて、うちのお店のこと、スタッフ同士の雰囲気、まかないのこと、社員の名前まで具体的に伝えて、そこから文章を作ってもらった。すると応募数が前回の倍近くきた。25人のスタッフのうち20人がアルバイトだから、採用が止まるとすぐ現場が回らなくなる。それを思ったら、AIに「うちの店を正しく知ってもらう」ことがいかに大事か、身に染みた。

今回のアドビの話で言えば、285億件のキーワードデータや43兆件のバックリンクを使って自社が「どのプロンプトで機会損失しているか」を把握できるという。さすがに大企業向けの話だ。でも、その考え方は真似できる。「渋谷 居酒屋 女子会 個室」「池袋 飲み放題 コスパ」みたいな、お客さんがAIに打ちそうなフレーズを自分で想像して、自分のインスタやGoogleビジネスプロフィールにちゃんと含まれているか確認してみる。それだけでも意味があると感じた。

先日、下の子が夕飯に「ねえ、今日のご飯なにー?」ってスマホのAIに聞いていた。小学生でもそれが当たり前になっている。うちのお店の話じゃないけど、これが10年後の日常なんだと思うと、のんびりしていられない気がした。


  • Googleビジネスプロフィールの説明文を月1回見直す

  • インスタのキャプションに「女子会」「個室」「飲み放題」などのキーワードを自然に入れる

  • 食べログのQ&Aに、お客さんがAIに聞きそうな質問と答えを自分で追加してみる



大きなシステムは導入できなくても、こういう地道なことの積み重ねが、AIに「この店を薦めていい」と思ってもらえる下地になるはずだ。シフト管理のアプリを入れたときも、最初は「面倒くさい」って思ったけど、3ヶ月で劇的に楽になった。今度はAIへの露出も同じような感覚で、少しずつ手をつけてみようと思っている。自分のお店を、AIに名前で呼ばれる存在にしたい。

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