OSSのセキュリティ対応、社内稟議でどう説明するか

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
OpenAIが「Patch the Planet」というイニシアチブを始めた、という記事を読みました。Daybreakというプログラムの一環で、オープンソースのメンテナーがAIと専門家レビューを使って脆弱性を発見・修正できるよう支援する取り組みです。読んだ瞬間、正直「これは他人事ではないな」と感じました。

うちの営業DX推進部でも、ここ数年でSaaSツールの導入が急速に進みました。部下25名のうち、半数以上が何らかのAI支援ツールを日常的に使っています。顧客情報を扱う以上、ツールの裏側に何が使われているかは気になっていました。それがOSSコンポーネントを多用しているケースは珍しくありません。情シスから「ライブラリの脆弱性管理はベンダー任せになっていませんか」と指摘を受けたのが半年前のことです。

「OSS」という言葉、経営陣にどう伝えるか



その指摘を受けて、私が取り組んだのが社内向けのセキュリティリスク棚卸しでした。ベンダー各社に問い合わせを送り、使用しているOSSコンポーネントの一覧とパッチ対応のサイクルを確認しました。回答が返ってきたのは問い合わせ先の約半数。残りは「対応中」「確認後ご連絡」という返答のまま、数週間が経過しました。

これを経営陣への報告資料にどう落とし込むか、かなり頭を悩ませました。「OSSの脆弱性管理」という言葉だけでは、相手に危機感が伝わりません。うちの経営陣は製造畑の出身が多く、ITのレイヤーの話を出すと「それはベンダーが責任を持つべき話では」と返ってくることが多いのです。そこで私が選んだ説明軸は「仕入れ先の品質管理」でした。製造業であれば、部品の品質保証書を求めるのは当然です。ソフトウェアも同じで、コンポーネントの安全性を証明できないベンダーは選定から外す、という論理です。この切り口にしてから、経営陣の反応が明らかに変わりました。

Patch the Planetが示す「脆弱性対応の新しい速さ」



今回のOpenAIの取り組みに戻ります。AIを使って脆弱性を見つけ、修正までの時間を短縮するというアプローチは、ベンダー選定の評価軸としても使えると感じました。従来、OSSの脆弱性対応はメンテナーの工数次第で、対応が数ヶ月単位で遅れることもありました。AIが検知と修正案の生成を支援するなら、そのサイクルが大きく変わります。

次のベンダー評価のタイミングでは、以下の点を確認項目に加えようと考えています。

  • 使用OSSコンポーネントのSBOM(ソフトウェア部品表)を提示できるか
  • 脆弱性検知から修正リリースまでの平均日数を開示できるか
  • AIツールを使った自動検知の仕組みが導入されているか


これらをRFP(提案依頼書)に盛り込むことで、ベンダー側の対応力を数値で比較できます。投資対効果を語る場面でも、「脆弱性対応コストの可視化」は経営陣に刺さりやすい論点です。情報漏洩が起きてからの損害対応コストを考えれば、事前のベンダー審査に費用をかけるほうが合理的、という説明ができます。

部下に伝えるべきことが変わってきた



少し前まで、部下へのDXツール導入の指示は「使ってみろ、まず試せ」でした。でも今は「使う前に、何でできているかを確認してから使え」と言うようになっています。先月、若手の営業担当が海外製の無料ツールを業務に使い始めていることに気づきました。本人に悪意はなく、便利だから使っていた、という話です。ツールの規約を確認すると、入力データが学習に使われる可能性が排除されていなかった。すぐに使用停止を指示しましたが、ヒヤリとしました。

Patch the Planetのような取り組みがOSSの世界で広がっていくのは、長い目で見れば良いことだと思います。ただ、それが成熟するまでの間、私たちユーザー側も「ベンダーを信頼する前に確認する」姿勢を持ち続ける必要があります。稟議を通すための資料を作りながら、自分自身もその問いを更新し続けています。あなたの会社では、導入ツールのOSS依存度を把握できていますか。

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