Geminiが動画を作る時代に、私のデザインはどこへ行く

林 美里
林 美里 30代・ フリーランスデザイナー
Google I/O 2026 で発表された Gemini Omni の記事を読んで、正直ちょっと固まった。

画像・音声・動画・テキストを組み合わせてインプットにして、高品質な動画を生成できる。さらに会話しながら編集もできる、というやつだ。デモ映像を9本並べて「これが今のAIです」と言われると、さすがに笑えなかった。

私はロゴやブランディングを中心に仕事をしているフリーランスデザイナーで、Midjourney や Adobe Firefly はすでに業務に組み込んでいる。ラフ案を素早く出すとか、クライアントへの提案バリエーションを増やすとか、そういう使い方だ。でも今回の Gemini Omni のデモを見ていると、「使い方」という話を超えてきている感じがした。

「使う」より先に来るもの



動画生成の精度が上がること自体は、まあ予想の範囲だった。ただ、Gemini 3.5 が複雑なエージェント的なワークフローを実行するために設計されている、という部分に引っかかった。エージェント、つまりAIが自律的に作業を連鎖させていく動き。これがデザインの現場に入ってくると、どうなるんだろう。

たとえば今、ブランディングの仕事では、最初のヒアリングからムードボード作成、ロゴ案提示、フィードバック反映まで、いくつかのステップを私が手を動かして進めている。工数にすると初回案件で40〜60時間くらい。それがエージェント型のAIによって、ある程度「連鎖」してしまうとしたら。

迷う。使えば速くなるのはわかっている。でも速くなったとき、私はクライアントに何を請求するんだろう、という話になる。

これは価格の問題だけじゃない。「林さんに頼む理由」という話だ。

消えそうで消えない、でもじわじわ薄まる感覚



先週、パートナーに愚痴った。「AIが何でもできるようになったら、私の仕事なくなるかも」って。彼は「でも美術館に行って感動するのは人間じゃん」と言った。そうなんだけど、それって私の仕事の話じゃないよね、とも思った。

正直に言うと、「全部任せると自分が消える」という感覚は前からある。Midjourney でロゴのラフを出すとき、たまに「あ、これ私が作りたかったやつだ」ってなることがある。そういうとき少しひやりとする。自分の趣味嗜好を学習されているような気がして。活版印刷を趣味にしているのも、多分その反動だ。機械では出せない、手の誤差を愛せる場所に逃げたくなる。

でも逃げ続けることもできない。Gemini Omni が動画生成まで飲み込んでいくなら、Webデザインの動的な部分、モーションやビジュアルコミュニケーションにも確実に影響が出てくる。実際に私が担当しているWeb案件では、クライアントから「アニメーションも入れたい」という要望が増えている。今は外注しているか断っているかどちらかだ。

ジレンマごと仕事にする、という選択肢



このデモを見ながら考えたのは、ツールとして使う話より先に、「自分がどういうデザイナーでいたいか」を決めないといけないということだ。

AIに任せた部分を隠してクオリティだけ出す、という方向には行きたくない。それは迷っているわけじゃなくて、もう決めている。

じゃあ何をするか。Gemini Omni や Gemini 3.5 を使いながらも、「なぜこの方向性にしたか」「どういう文脈でこのビジュアルを選んだか」という判断のプロセスをクライアントに見せる仕事の仕方に、もっとシフトしたい。成果物を渡すだけじゃなくて、思考の過程を一緒に歩いてもらう形。

それが「林さんに頼む理由」になるかどうかは、まだわからない。ちょっと怖い。でも、ここを避けて通ったら本当に薄まっていく気がする。

あなたは今、自分の仕事の中で「AIに任せた部分」をどう説明しているだろうか。

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