ドローン調達リスクを見て、AI投資の稟議を書き直した

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
先週、The Vergeのポッドキャスト記事を読んでいたら、妙に手が止まりました。
米国の自律型ドローンメーカーSkydioのCEO、Adam Bryへのインタビューです。内容はドローンのビジネス展開や米中関係の話なのですが、途中でこういう話が出てきます。

トランプ政権が昨年末に外国製ドローンを禁輸処置にした結果、市場を席巻していた中国製DJIドローンが一夜にして米国市場から消えた、という話です。ユーティリティ企業など、インフラ点検にDJI製品を安価に使っていたところが、いきなり高価なSkydio製品しか選択肢がなくなった状況になったわけです。

「安くて便利」が突然消えるリスク



これを読んで、ドローンの話をしているはずなのに、AIツールのベンダー選定と頭の中でつながってしまいました。
うちの部でも今期、営業支援AIの導入を検討しています。部下25名が使う前提で、提案書作成支援と議事録の自動化から始めようという方向性です。コスト面では複数ベンダーを比較していて、海外系のSaaSが価格競争力で有利に見えます。

ただ、DJIの話を読んで少し慎重になりました。今は安くて使えるツールが、規制・制裁・サービス終了などの理由で突然使えなくなるリスクを、稟議書にどう書くかという問題です。経営陣は投資対効果に目がいきます。でも本当のリスクは「選んだベンダーが 3 年後もいるか」という継続性の話ではないでしょうか。

稟議書に「撤退シナリオ」を入れる



先週、部下のひとりがまとめてくれたベンダー比較資料を見直しました。価格・機能・導入実績は丁寧に整理されていましたが、ベンダーリスクの記載は薄かったです。「サポート体制」の欄に1行あるだけで、データの所在や契約終了時のエクスポート可否については触れていませんでした。

Skydioの記事でもう一点引っかかったのが、Adam Bryが「AIを使ってさらに多くの人をSkydioに採用できる」と発言していた部分です。要するにAIを使って人を減らすのではなく、会社を成長させるために使うという話です。経営陣への説明でこの視点は使えます。生産性向上という切り口より「営業組織の成長に投資する」という表現のほうが通りやすい場面もあります。

実際に今回の稟議をどう書き直したかというと、投資対効果の試算はそのままに、リスク欄を3つに分けました。

  • サービス継続リスク:ベンダーの財務状況・上場有無・親会社の情報
  • データ主権リスク:社員の入力データがどのサーバに保存されるか、国内法規制との整合性
  • 乗り換えコスト:万一撤退時に別ツールに移行する際の工数見積もり


セキュリティ部門から「国内データセンターか」という指摘は必ず来ます。それを事前に潰しておかないと、稟議が差し戻しになります。過去に一度、海外SaaSを提案して差し戻された経験があるので、今回は先手を打つつもりです。

ベンダー選定は「今」だけで判断しない



週末に妻と夕食をとりながら、DJIの話をしたら「ドローンって中国製だったの?」と驚いていました。一般の人には案外知られていない話です。
営業DXに使うAIツールも、5年後に同じような話になっていても不思議ではありません。今安い、今使いやすいという理由だけで選ぶと、後で組織全体が振り回されるリスクがあります。

Skydioのインタビューはドローンの話ですが、テクノロジー調達の本質を改めて考えさせてくれる内容でした。稟議書を書く立場としては、こういう海外事例を「他山の石」として使えます。経営陣への説明資料に「米国ではドローン市場でこういうことが起きた」という一節を入れるだけで、リスク管理の視点が伝わりやすくなります。

今週中に稟議書の修正版を仕上げて、来月の投資委員会に間に合わせます。まずリスク欄の3項目を各ベンダーに確認するメールを、明日部下に送るところからです。

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