AIにセキュリティを任せる時代、デザイナーは?

林 美里
林 美里 30代・ フリーランスデザイナー
OpenAIが「Daybreak」というセキュリティツールを出した、というニュースを読んだ。Codex SecurityとGPT-5.5-Cyberを使って、組織の脆弱性を自動で見つけて修正まで支援するらしい。正直、最初は「自分には関係ない話」と思って流しそうになった。でも読み進めるうちに、なんか引っかかりが出てきた。

セキュリティって、これまで高度な専門家がいないと手が届かない領域だった。それがAIで自動化される。同じことが、デザインでも起きている。いや、もうとっくに起きている。

Midjourneyを使い始めた頃の話



独立して3年目くらいのとき、Midjourneyを仕事で使い始めた。最初はコンセプトボードのラフを作るのに使っていた。クライアントに方向性を見せる段階で、自分が頭の中にあるイメージを素早く可視化できるのが便利で、提案の質が上がった気がしていた。実際、あの頃から打ち合わせの通過率が少し上がったと思う。

ただ、そのうちにちょっと怖くなってきた。自分が「選ぶ人」になっていく感覚があって。生成→選択→調整、の繰り返しで仕事が回るようになると、最初から自分の手で描く時間がどんどん減っていく。Adobe Fireflyも使い始めてから、さらにその傾向が強まった。

パートナーに「最近手を動かしてる?」と聞かれたことがある。ちょうど納品ラッシュが続いていた時期で、正直「ほとんど動かしてない」と答えた。趣味でやっている活版印刷だけが、自分の手が主役の時間になっていた。

「代替される」より「消える」が怖い



Daybreakの記事を読んで思ったのは、セキュリティエンジニアたちも似たような感覚を持つんじゃないかということだ。AIが脆弱性を自動スキャンして、パッチ当てまで支援してくれるなら、人間がやることって何になるのか。

でも、セキュリティとデザインで違うのは、デザインには「作った人の文脈」がまだ価値を持ちやすい、という点だと思う。ロゴひとつとっても、なぜこの形か、なぜこの色か、クライアントとのやりとりの中で積み上げてきた理由がある。AIにはその文脈を持てない。持てないというより、持つ必要がないから持たない。

ただ、クライアントがその「文脈」にお金を払い続けてくれるかどうか、迷う。安くて速くてそれなりのクオリティがAIで出せるなら、丁寧に作ったものの価値をどう説明するかが、これからどんどん難しくなる。実際、去年は単価の話でふんわり合わなかった案件が2、3件あった。

AIが使えることが「当たり前」になった世界で、自分の仕事の輪郭をどう保つか。Daybreakのニュースは、自分には遠い話のようで、刺さり方が意外と近かった。

使いながら、消えないようにする



結局、使わないという選択肢はない。競合はAIで手数を増やしてくるし、クライアントもAIで作れることを知っている。使わないと、単純に仕事の回転が落ちる。

だから使う。でも、使い方に自分なりの線を引こうとしている。たとえばコンセプトの言語化は自分でやる、ムードボードの最終判断は自分でやる、という具合に。AIが出してきたものをそのまま渡さない、という地味なルールだけど、これが今のところ「自分が消えないための習慣」になっている。

セキュリティの専門家も、AIツールに置き換えられると嘆くより、自分しか持てない判断軸を育てる方向に動くんじゃないかな、と勝手に想像した。

完全に答えが出ていないまま、今日もFireflyを開く。それが正直なところだ。

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