AIに手伝わせながら「私らしさ」を守れるか

林 美里
林 美里 30代・ フリーランスデザイナー
Web担当者Forumで、6月第3週だけで65件ものセミナーが並んでいた。
マーケティング、SEO、EC、データ分析。ざっと眺めると「AI時代の〜」という文字列が何度も出てきて、少し目が疲れた。

そのなかに、クリーク&リバー社が6月15日に開いていた「生成AI時代の著作権」というウェビナーが混じっていた。
タイトルを見た瞬間、「これは私向けだ」とすぐに思った。
AIが出した画像の著作権は誰のものか。商用利用するとき何に気をつけるか。
まさに今、自分がずっと曖昧なままにしてきたことだった。

Midjourneyで稼ぐのは「私」なのか



独立してもう5年になる。
ロゴ、ブランディング、Webと、一通りこなせるようになったけど、正直ここ1年で仕事のやり方がかなり変わってきた。
MidjourneyやAdobe Fireflyを使い始めたのは2年ほど前で、最初は「すごい、これで作業が早くなる」と単純に喜んでいた。

でも、だんだん妙な感覚が出てきた。
クライアントに納品した画像を自分でもう一度見たとき、「これ、本当に私が作ったのか?」という気持ちがじわっとくる。
パートナーに「また新しいロゴ作ったの?」と聞かれて、「まあ、半分は私かな」って答えてしまった日があって、それがずっと引っかかっている。

ツールを使うのは確かに自分だ。
プロンプトを考えるのも、方向性を決めるのも、最終的に選ぶのも自分。
でも、線を引いたのは誰かと問われると、少し迷う。

使わないと競合に追いつかれる、でも



フリーランスで仕事をとり続けるには、スピードも単価も無視できない。
AIを使えば、ラフ案を出すスピードが体感で3倍くらいになった。
クライアントに「早いですね」と言われる頻度も増えたし、その分だけ案件を受けやすくなった。

ただ、そこで価格交渉が難しくなってきた側面もある。
以前は「手描きのラフから始めます」と説明することで、工数への理解を得やすかった。
今は「AI使えるんでしょ?」という空気がクライアント側にも出てきていて、作業時間が短くなったと思われると単価を下げろと言われる。
実際、今年の春に常連のクライアントから「Firefly使って作ったなら、前の半額でいいよね」と言われたことがあった。
ちょっと固まった。どう返していいか、言葉がすぐに出なかった。

AIが出すアウトプットに、私の5年分の審美眼が乗っている。
どの方向性を選ぶか、何を捨てるか、どこにその会社らしさを入れるか。
それはプロンプトだけでは作れないものだ。
自分ではそう思っている。でも、それを外側から証明するのは難しい。

著作権のセミナーに戻ると、「AI作品の著作権は誰のものか」という問いは、私にとって法律の話だけじゃない。
自分のアイデンティティの話でもある。
Midjourneyが生成した画像を私がどこまで「自分の作品」と言えるのか。
曖昧にしたまま仕事を続けることに、最近ちょっと怖さを感じている。

どこで「自分」が介在しているかを言語化したい



今考えているのは、AIを使った工程と自分が手を加えた工程を、きちんと言語化して提示することだ。
活版印刷が好きで、手で触れる質感や誤差を大事にしてきた自分が、なぜMidjourneyの特定の出力を選ぶのか。
その理由を言葉にできれば、価格の根拠にもなるし、クライアントへの説明にもなる。


  • 方向性の決定 (何を作るかを決める段階)

  • プロンプト設計 (どう作るかを言語で構造化する段階)

  • 選択と編集 (何を残し、何を直すかを判断する段階)

  • 文脈への統合 (ブランドや使用先に合わせて整える段階)



この4つのどこに時間とスキルを使っているかを、クライアントに説明できるようにしたい。
AIが出してくる候補は100個あっても、私が選ぶのは1個だ。
その1個を選んだ根拠こそが、5年分の仕事なのだと思っている。

法律の話は正直まだよくわからない部分が多い。
6月のウェビナーはアーカイブで残っているはずなので、時間を作って見ることにした。
自分が作ったものを自分のものだと言い切れる状態で仕事を続けたい。
そのためにまず、曖昧な部分を一つひとつ棚卸しすることから始める。

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