デジタルとリアルの話、うちには関係ないと思ってたけど

渡辺 浩二
渡辺 浩二 50代・ 建設業・代表取締役
息子が「これ読んでみてください」とスマホを差し出してきた。
アルビオンだのアテニアだの、化粧品メーカーの話だ。
EC(ネット通販)の顧客体験をどう上げるか、デジタルとリアルをどう繋ぐか、そういう内容だった。

うちみたいな田舎の土木会社に、何の関係があるんだ。
最初はそう思った。

「選ばれ続ける」という問いが刺さった



読み進めるうちに、ある一文で手が止まった。
「なぜあのブランドは選ばれ続けるのか」という問いだ。

アテニアの新海さんという人が、2024年に通販営業部の部長に就いてから「値引きではない売り方へのシフト」を進めているという。
長年の定期顧客にポイント制度を作り、フォロープログラムを刷新した。
値段を下げて買ってもらうんじゃなく、関係を積み上げて選んでもらう、という発想だ。

それを読んで、親父の代から続くうちの会社のことを考えた。
45人の会社で、東北の某市を拠点に道路工事や河川改修を請け負って30年近く経つ。
発注者は県か市か国だから、「選ばれる」という感覚があまりなかった。
入札で取るか取られるかだと、ずっと思ってきた。

でも本当にそうだろうか。

昨年、県の担当者から「渡辺さんのところは施工管理の報告書が丁寧で助かる」と言われたことがあった。
正直、その言葉をその時はただの世間話だと聞き流していた。
でも今思うと、あれは「また頼みたい」という意思表示だったかもしれない。

サイバー攻撃で17億円という数字に驚いた



記事には、別の講演の話も出てきた。
サイバー攻撃で17億円の損失を出し、EC出荷が止まったという事例だ。

うちはECなんてやってないから関係ない、と思いかけた。
が、少し立ち止まって考えると、うちも最近は現場のデータをクラウドに上げることが増えてきた。
測量データ、施工写真、工程管理の表。
息子が「セキュリティちゃんとしないとまずい」と前から言っていたのを、流してきた。
17億円というのは大企業の話だが、うちが同じ目に遭えば廃業と同じだ。

息子は先月、ITコーディネーターと名乗る人間を呼んで話を聞いていた。
私はゴルフの帰りで疲れていたので、同席しなかった。
それを少し後悔している。

デジタルとリアルの「分断」は、うちにもある



記事の中で、アルビオンの榊原さんは自社サイトを4つShopifyで立ち上げて運営していると書かれていた。
化粧品の通販でECと店頭の顧客体験が分断されているという課題を、現場で解決してきた人間だ。

うちで言えば、本社の事務と現場の職人の間に似たような分断がある。
本社は工程表を更新しても、現場の班長はそれを紙で受け取る。
デジタルと人が噛み合っていない。
2024年問題で時間外規制が入ってから、工程管理の精度が死活問題になった。
にもかかわらず、情報の流れは親父の代からほとんど変わっていない。

若手が入らない一因もここにあるんじゃないかと、最近ようやく思い始めた。
今の20代は、業務が紙とアナログだらけの会社を見て、長く働く気にならない。
採用の合同説明会に行った担当者が「他社の若い子たちがスマホで資料を見ている中、うちだけ紙の会社案内を配っていた」と苦笑いしていたのを思い出す。

化粧品のセミナーを読んで、建設会社の課題が見えてくるというのは、われながら不思議な話だ。
息子に「お前の言いたいことは何となくわかった」と伝えたら、珍しく嬉しそうな顔をしていた。

次の役員会で、ITコーディネーターともう一度話す機会を作ろうと思っている。今度は最初からちゃんと席に着く。

無料相談受付中

AI開発・DX推進についてお気軽にご相談ください。オンライン30分から。

無料相談を申し込む