税務AIエージェントの自己改善という話を読んで考えたこと

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
OpenAIのブログに、税務申告を自動化するAIエージェントの事例が載っていました。OpenAI・Thrive・Creteという3社が共同で開発したもので、申告業務の精度を上げながら、エージェント自身が繰り返し改善していく仕組みを作ったという内容です。

正直、最初は「税務の話か」と流し読みするつもりでした。ただ読み進めるうちに、これは税務に限った話ではないと気づきました。自分の仕事に置き換えると、かなりリアルな話として受け取れたんです。

「自己改善するエージェント」という発想が刺さった理由



私が担当している営業DXの現場では、ツールを入れた後に「使われなくなる」という問題が繰り返し起きています。2年前に入れた営業支援ツールも、当初は25名の部下全員に徹底させたつもりでした。半年後に確認したら、実際に定期的に使っているのは7〜8名だったという苦い経験があります。

なぜ使われなくなるかというと、現場の入力が面倒で、出てくるアウトプットがその人の状況に合っていないからです。ツールが「いつまでも同じ動き方をする」ことが問題だったと、今になって思います。

今回の税務エージェントの事例が示しているのは、エージェントが繰り返しのタスクを通じて精度を上げていく、という設計です。人間が手を動かして改善するのではなく、エージェント自身が処理の精度を高めていく。これが営業の現場にも応用できるなら、ツールが現場にフィットしていく可能性が出てくるわけです。

経営陣への説明で「自己改善」をどう使うか



こういう技術的な話を経営陣に持っていくとき、私はいつも投資対効果の説明に時間をかけます。「で、何がどのくらい減るのか」という問いに答えられないと、稟議が前に進まないからです。

この自己改善エージェントの切り口で言えば、初期の精度が低くても運用で改善されていくという設計は、むしろ経営陣に説明しやすい面があります。「導入直後に完璧を求めない代わりに、時間とともに精度が上がる仕組みになっている」という説明は、ゼロイチの投資判断よりも受け入れられやすいかもしれない。

ただ、セキュリティの話は別です。弊社の場合、社内のセキュリティ要件がベンダー選定の最初の壁になります。エージェントが社外のAPIと通信する構造になっていれば、情報システム部門が必ず引っかかってきます。Codexを使ったシステムがどの範囲のデータを処理するのか、どこに送信されるのか。この点を整理しないと、どんなに良い提案でも稟議の土台に乗せられません。

ゴールデンウィーク明けにちょうどベンダー3社との打ち合わせが入っています。今回の事例を下敷きにして、各社に「自己改善の仕組みをどう実装しているか」「データの取り扱いはどうなっているか」という2点を必ず聞いてみようと思っています。

部下に使わせる前に自分が理解する



先週、部下の一人が「最新のAIエージェント、試してみたいんですが」と声をかけてきました。入社4年目の真面目な子で、こういうことに積極的なのは助かります。ただ私の答えは「もう少し待って」でした。

自分がまだ投資対効果を説明できる段階にないのに、部下に使わせてしまうと、後から経営陣に「あれ、何に使ってるの」と聞かれたときに答えられない。それよりも、ベンダー評価と並行して、自分がある程度理解してから展開する方が、結果的に組織として続きます。

税務エージェントの事例が興味深いのは、単なる自動化ではなくワークフロー全体の精度向上という視点を持っているところです。申告の精度が上がれば、確認作業が減り、専門家の時間が別の判断業務に使えるようになる。同じ構造を営業に当てはめると、提案書作成や顧客データの整理が自動化・精度向上されることで、部下が顧客との関係構築に使える時間が増えるという話になります。

この構図が経営陣に伝われば、単なるコスト削減ではなく、売上につながる投資として見てもらえる。そういう説明の組み立てを、来月の稟議に向けて準備しておくつもりです。自分がどう理解したかを言葉にできるかどうか、そこが全てを決めると感じています。

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