AIが教えてくれた、「自分の仕事」の輪郭

林 美里
林 美里 30代・ フリーランスデザイナー
Preplyという語学学習プラットフォームのことを、少し前に読んだ。OpenAIのブログに載っていた話で、AIが生成したレッスンサマリーをつかって、学習者一人ひとりにパーソナライズされたフィードバックを届けるというものだ。語学学習と自分の仕事は全然ちがう。でも、読みながらずっと「あ、これ、他人事じゃない」と思っていた。

Preplyがやっていることを簡単に言うと、AIを使ってフィードバックや練習問題を個別に生成しながら、その上に人間の講師が乗っかって関係を深める、という構造だ。AIは「下地」で、人間は「仕上げ」というか、温度を入れる役割という感じ。それを読んで、デザインの仕事もそういう構造になりつつあるよな、とじんわり感じた。

AIに下地を作ってもらうのは、もう普通になった



フリーランスになって5年。最初の2、3年はAIツールなんてほとんど使っていなかった。ところがここ2年くらいで、Midjourneyでムードボードを作ったり、Adobe Fireflyでテクスチャを試したりするのが当たり前になってきた。正直、最初は「これって自分が作ったことになるの?」という感覚があった。

でも使い続けて気づいたのは、AIが出してくるのはあくまで「候補」だということだ。Midjourneyに何十回プロンプトを入れても、クライアントの会社の空気感とか、社長のちょっとした口癖から感じるブランドの方向性とか、そういうものはどこにも反映されない。それを拾い上げるのは、ヒアリングをした自分にしかできない。AIは速くて広くて、でも「このクライアントにとっての正解」は知らない。そこが大事なところだと、使えば使うほどわかる。

「消える」怖さは、どこから来るのか



ただ、迷うのは競合との比較をし始めたとき。SNSを開くと、AIをフル活用したデザイナーが「1日でロゴ10案」みたいな発信をしている。クライアントによっては、それで十分かもしれない。価格も明らかに安い。ちょっと怖い、というのが正直なところで、パートナーにも「自分の仕事って5年後どうなるんだろうね」と話したことがある。彼は「でも林さんに頼んでくる人って、速さより『ちゃんとわかってくれる人』を求めてる気がするけど」と言った。そうかもな、と思いつつ、全部それで片付けていいのかという疑問も消えない。

Preplyの話に戻ると、あの会社も同じことを考えたはずだ。AIだけで語学学習を完結させることは技術的にできる。でも人間の講師を残した。なぜかというと、モチベーションの維持とか、細かいニュアンスの修正とか、「この人に続けたい」という感情とか、そういうところが人間じゃないと埋まらないから、ということなんだと思う。

デザインも同じ構造だ、たぶん。

  • ヒアリングで拾ったクライアントの「言語化できていない要望」
  • 提案のときの「なぜこの方向にしたか」の説明と会話
  • 修正を重ねながら育てる信頼感


このあたりは、AIに任せると確かに薄れる。薄れるというより、そもそもAIには発生しない。だから「全部任せると自分が消える」という感覚は、ある意味正しい警戒心なんだと思っている。ただ、AIを使わない選択肢もないのが現実で、そこがずっとぐるぐるする。

下地と仕上げを、意識的に分ける



Preplyの話を読んで、少し整理できたことがある。AIと人間の役割分担を「仕方なく」じゃなくて「意図して」設計すること。AIがやるのはここまで、自分がやるのはここから、という線引きを、ぼんやりじゃなくてちゃんと決める。そうすれば「消える」不安も、「使わないと負ける」焦りも、少し落ち着く気がする。

今月、新しいロゴ案件が入った。まずFireflyでカラーパレットの検討をして、方向性が絞れたらMidjourneyでビジュアルトーンを広げてみる予定だ。その後のコンセプト説明とプレゼンは、全部自分でやる。それが今の自分なりの答えで、来年どう変わるかはまだわからない。

語学の話が、こんなにデザインの話に直結するとは思っていなかった。

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