先週、SEOに関するまとめ記事を読みました。医療とは縁遠いジャンルですが、内容が妙に引っかかって、しばらく頭から離れませんでした。
MozのDr. Peter J. Meyersが1000件のロングテールクエリを分析した記事です。「検索キーワードが1つも被らないのに上位表示される」という現象を解説していました。つまりGoogleは、キーワードの一致ではなく、文脈や意図を読んで検索結果を出している、ということです。
これを読んで、診察室での自分の言葉遣いを思い返しました。患者さんは「お腹が重い」「食欲がない」「なんか変な感じ」と言います。一方で自分はカルテに「心窩部不快感」「食欲不振」「腹部違和感」と記録する。用いる言葉がまったく異なります。
以前、患者さんから「先生の説明はわかりにくい」と直接言われたことがあります。もう15年ほど前の話ですが、内視鏡検査の前処置を医学用語で説明してしまって、患者さんが何をすればいいかわからないまま当日来てしまったのです。それ以来、問診票や院内掲示の言葉には気をつけるようにしてきたつもりでした。
ただ今回の記事を読んで、まだ甘いかもしれないと感じました。Googleが1000件ものクエリを分析して初めて見えてきた「言語のズレ」が、うちのクリニックにも普通に存在しているはずです。
うちのクリニックは電子カルテをSS-MIX対応のものに切り替えて3年になります。スタッフは私を含めて12名、1日に80人前後の患者さんが来られます。そのうち初診の方が1日10人前後いますが、問診票を読んで「これは何を聞いているのかわからない」と受付で詰まってしまう患者さんが、月に数名は出ます。
妻(看護師長です)とも以前からそこは話題に上がっていて、「問診票、そろそろ作り直した方がいいよね」という話が何年も続いている状態でした。先週のSEO記事を読んで「これを機にやろう」と決めて、試しにChatGPTに問診票のテキストを貼り付けて、「60代以上の患者が意味を取りにくい表現はどこか」と聞いてみました。
すると、想定以上に指摘が出てきました。
正直、「既往歴くらいは通じるだろう」と思っていました。しかしよく考えると、医療用語に慣れていない患者さんにとって、これは「キーワードが1つも被らない状態」に近いのかもしれません。Googleが文脈で意味を補完してくれるように、患者さんが内容を推測しながら読んでいる、ということです。
ただ、ここは慎重に考えています。AIが提案した言い換えをそのまま採用するつもりはありません。問診票は診断の入り口です。言葉を易しくしすぎると、逆に情報が欠落するリスクがあります。「排便の性状」を「うんちの形や硬さ」に変えることで、患者さんが記入する情報の精度が下がらないか。これはエビデンスが必要な話です。
医学論文でいえば、患者報告アウトカム(PRO)の分野でこの問題を扱った研究が複数あります。患者が自己申告する症状の言語と、医師が記録する言語のギャップが診断精度に影響するという報告は以前から出ています。今回のSEO記事が言っていることは、実は医療現場でずっとあった問題と同じ構造でした。
今週末、妻と一緒に問診票を見直す時間を取るつもりです。AIの提案はあくまで「見落としのチェックリスト」として使い、最終的な文言は私と妻、そして受付スタッフの3者で確認します。責任は院長である自分が持つものですし、患者の安全に直結する文書をAIに任せきりにするつもりは、最初からありません。
SEO記事から問診票の見直しに着地するとは、読む前には想像もしていませんでした。異分野の話でも、構造が似ていれば学べることはある、というのが今回の収穫です。
MozのDr. Peter J. Meyersが1000件のロングテールクエリを分析した記事です。「検索キーワードが1つも被らないのに上位表示される」という現象を解説していました。つまりGoogleは、キーワードの一致ではなく、文脈や意図を読んで検索結果を出している、ということです。
患者が使う言葉と、私が使う言葉のズレ
これを読んで、診察室での自分の言葉遣いを思い返しました。患者さんは「お腹が重い」「食欲がない」「なんか変な感じ」と言います。一方で自分はカルテに「心窩部不快感」「食欲不振」「腹部違和感」と記録する。用いる言葉がまったく異なります。
以前、患者さんから「先生の説明はわかりにくい」と直接言われたことがあります。もう15年ほど前の話ですが、内視鏡検査の前処置を医学用語で説明してしまって、患者さんが何をすればいいかわからないまま当日来てしまったのです。それ以来、問診票や院内掲示の言葉には気をつけるようにしてきたつもりでした。
ただ今回の記事を読んで、まだ甘いかもしれないと感じました。Googleが1000件ものクエリを分析して初めて見えてきた「言語のズレ」が、うちのクリニックにも普通に存在しているはずです。
AIに問診文の「読み直し」を頼んでみた
うちのクリニックは電子カルテをSS-MIX対応のものに切り替えて3年になります。スタッフは私を含めて12名、1日に80人前後の患者さんが来られます。そのうち初診の方が1日10人前後いますが、問診票を読んで「これは何を聞いているのかわからない」と受付で詰まってしまう患者さんが、月に数名は出ます。
妻(看護師長です)とも以前からそこは話題に上がっていて、「問診票、そろそろ作り直した方がいいよね」という話が何年も続いている状態でした。先週のSEO記事を読んで「これを機にやろう」と決めて、試しにChatGPTに問診票のテキストを貼り付けて、「60代以上の患者が意味を取りにくい表現はどこか」と聞いてみました。
すると、想定以上に指摘が出てきました。
- 「排便の性状」→「うんちの形や硬さ」に変えた方が伝わる
- 「既往歴」→「これまでかかった病気や手術」と説明書きを足す
- 「常用薬」→「毎日飲んでいる薬」の方が高齢者に伝わりやすい
正直、「既往歴くらいは通じるだろう」と思っていました。しかしよく考えると、医療用語に慣れていない患者さんにとって、これは「キーワードが1つも被らない状態」に近いのかもしれません。Googleが文脈で意味を補完してくれるように、患者さんが内容を推測しながら読んでいる、ということです。
AIの出力をそのまま使うつもりは、まったくない
ただ、ここは慎重に考えています。AIが提案した言い換えをそのまま採用するつもりはありません。問診票は診断の入り口です。言葉を易しくしすぎると、逆に情報が欠落するリスクがあります。「排便の性状」を「うんちの形や硬さ」に変えることで、患者さんが記入する情報の精度が下がらないか。これはエビデンスが必要な話です。
医学論文でいえば、患者報告アウトカム(PRO)の分野でこの問題を扱った研究が複数あります。患者が自己申告する症状の言語と、医師が記録する言語のギャップが診断精度に影響するという報告は以前から出ています。今回のSEO記事が言っていることは、実は医療現場でずっとあった問題と同じ構造でした。
今週末、妻と一緒に問診票を見直す時間を取るつもりです。AIの提案はあくまで「見落としのチェックリスト」として使い、最終的な文言は私と妻、そして受付スタッフの3者で確認します。責任は院長である自分が持つものですし、患者の安全に直結する文書をAIに任せきりにするつもりは、最初からありません。
SEO記事から問診票の見直しに着地するとは、読む前には想像もしていませんでした。異分野の話でも、構造が似ていれば学べることはある、というのが今回の収穫です。