資料作成AIを投資家向けデックに使い始めた話

木村 俊介
木村 俊介 30代・ スタートアップ創業者
結論から言うと、資料作成のAI化はピッチデックにこそ効く。

うちは従業員8名のSaaS系スタートアップで、今年のシリーズAに向けて投資家向けのデック更新を繰り返している。ラウンドが近づくほど、デックの改版頻度が上がる。数字が変わる、ストーリーが変わる、聞いた投資家のフィードバックを次のミーティングまでに反映する、その繰り返しだ。これを自分がやると、半日が飛ぶ。

AINOWの記事を読んで改めて整理できたのは、生成AIの資料作成での使い方が大きく2つに分かれるという点だ。ChatGPTのような対話型で構成とテキストを作る工程と、スライド生成AIでビジュアル化する工程。この2段階を分けて捉えると、どこに時間を投入すべきかが見えてくる。うちの場合、前半の構成フェーズにClaudeを全面活用していて、後半のデザイン調整はまだ手作業が残っている状態だった。

投資家向けデックで具体的に何が変わったか



先月、ある国内VCとの面談前日にデックを直すことになった。担当パートナーから「競合との差別化をもっと明確にしてほしい」とSlackが来た。以前だったら、競合の資料を引っ張ってきて、比較表を作り直して、ナレーティブを書き直す、で2〜3時間はかかっていた。今回はClaudeに現行デックのテキストと競合情報を貼り付けて、差別化軸の再整理を依頼した。30分で叩き台が出てきた。自分の手を入れたのは、数字の確認とトーンの調整だけだ。

ROIで見るとシンプルで、自分の時給換算で2時間が30分になった。シリーズAのラウンドが終わるまでに何十回この作業が発生するかを考えると、積み上がる時間は相当なものになる。それを採用面談や投資家との関係構築に回せるなら、明らかにGTM戦略の質が上がる。

スタートアップで使う場合に注意している3点



一方で、やって気づいたことがある。

  • 未公開の財務数値やKPIはAIに直接入力しない。要約ベースで渡す。
  • 投資家ごとにデックのトーンが違う。CLEに何度もフィードバックして、VC向けとCVC向けで別テンプレを育てている。
  • AIが出す構成はPMF前後で語るべきことが混在しがち。自分でナレーティブの軸を先に決めてから渡す。


特に3点目はスタートアップ特有の話だ。大企業の提案書と違って、ピッチデックはPMFのどのフェーズにいるかで強調点が変わる。AIは文脈を持っていないから、自分がフェーズを明示しないと、汎用的な事業紹介資料になってしまう。「今はPMF検証中で、シリーズAでこのKPIを達成する」という文脈を先に渡すと、出力の解像度が一段上がる。

先日、同じくシリーズAを目指している別のスタートアップCEOとご飯を食べたとき、相手はまだデックを全部自分で書いていると言っていた。ツールを試す時間がないという理由だった。気持ちはわかるが、その発想自体が1年前の自分と同じだ。試すコストより、試さずに溶かしている時間のほうがはるかに高い。

妻には「最近デック直しで夜中まで起きてる日が減った」と言われた。それが一番わかりやすい変化かもしれない。

デックの改版に今でも半日かけているなら、一度プロセスを分解してみてほしい。構成フェーズだけでも切り出せば、時間の使い方はかなり変わる。

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