ブラウザタブ1枚で生きるRoger Linnと、タブ沼エンジニアの自分

鈴木 蓮
鈴木 蓮 20代・ ソフトウェアエンジニア
The Vergeに面白いインタビュー記事が流れてきた。
MPCの生みの親、Roger Linnへの短いQ&Aだ。
LM-1というサンプルを使った世界初のドラムマシンを作り、その後継のLinnDrumはPrinceがPurple RainやAlt;1999で使い倒した。
そのくらいの巨人が、「集中するためにブラウザタブを1枚にしている」と言っている。

これを読んで、まず自分のChromeを見た。
今ひらいているタブは57枚だった。
ドキュメント、GitHub PR、Stack Overflow、Figma、なぞのまま死んでいるZennのタブ。
反省とかそういう話じゃなくて、純粋に「えぐいな」と思った。

J Dilla's MPC 3000とフォーカスの関係



Linnが作ったMPC60とその後継機は、hip-hopとhouseプロデューサーたちのツールになった。
J DillaのMPC 3000はスミソニアン博物館に収蔵されているくらいのレベルだ。
そのくらい時代を作ったものを設計した人間が言う「シンプルに保て」は、ふわふわしたライフハックとは違う重みがある。

自分がいちばん引っかかったのはLinnStrumentの話だ。
MPE、つまりMIDI Polyphonic Expressionに対応した3Dコントローラで、Linnが2014年にリリースした。
AMEIがMPEを正式規格として出したのは2017年なので、業界標準より3年も先に動いていたことになる。
規格が決まる前にプロダクトを出して、あとから規格が追いついてくる、という状況だ。

これ、プロトコルやライブラリの設計判断でたまに起きることと構造が似てる。
自分のチームでもAPI設計を先行させて、SDKが整備されるまで自前でwrapperを書いていた時期がある。
しんどいけど、そのフェーズを踏んでいない人にはわからない感覚が手に入る。

タブ1枚の制約を自分のコードに当てはめると



Roger Linnのインタビューで一番刺さったのが「ブラウザタブ1枚」というやつだ。
これを聞いてすぐ、自分のコードのコンテキストスイッチの話に脳が飛んだ。

最近LLMのAPIまわりを触っていて、システムプロンプトが無限に膨らむ問題にハマっている。
最初はシンプルだったのに、「念のため」の指示を重ねるうちに2000トークンを超えてきた。
当然コストも上がるし、モデルの挙動もぶれる。
タブを57枚ひらいているのと同じ状態だ。

試しに今週、プロンプトを一度完全に捨てて書き直した。
制約を「3つだけ」にして、あとは出力フォーマットのみ指定する構成にしてみた。

# トークン数の確認
tiktoken-cli count --model gpt-4o prompt.txt

結果、トークン数は1/3以下になって、レスポンスの質は体感で上がった。
Linnが「シンプルに保て」と言っている意味が、プロンプトのdiffを眺めながら少しわかった気がした。

Vision Proについても触れていて、「最も過小評価されているツール」と答えていた。
自分はまだ触ったことがないけど、Linndrum時代から50年近く最前線にいる人間がそう言うなら、少し気になってくる。
ただ今は別のところにお金を使いたいので、もう少し傍観する。

Roger Linnの話を読んで、自分が何かを決めるときの「シンプルさへの解像度」が低いなと気づいた。
「とりあえず動かす」はできるけど、「必要なものだけ残す」はけっこう難しいフェーズだ。
プロンプトもコードも、一度全部消してから書き直す勇気を持てるかどうか、そこが分かれ目かもしれない。

無料相談受付中

AI開発・DX推進についてお気軽にご相談ください。オンライン30分から。

無料相談を申し込む