先日、顧問先の建設業者から「うちの会社名でAIに聞いたら、古い情報が出てきた」と連絡が入りました。就業規則を改定して半年以上経つのに、以前の残業上限の数字がまだ答えとして出てくる、というのです。
そのとき正直、「ウェブの話だから自分には関係ない」と思いかけました。でも少し待てよ、と。自分の事務所のサイトも、AIに拾われているはずです。助成金の要件や申請期限は毎年変わります。就業規則のモデル条文も、法改正のたびに書き換えます。もし古い内容がそのまま流通しているなら、顧問先への説明と食い違いが起きてしまう。
LLMはJavaScriptを読み飛ばすことがある
それで、読んでいたWeb担当者Forumの記事に戻りました。SEOの専門家Jamie Indigoが書いた記事で、「AIクローラーの多くはJavaScriptをレンダリングしない」という話がありました。Chromeの設定でJavaScriptを一時的に無効にすると、AIがサイトをどう見ているかを擬似的に確認できる、とあります。試しに自分の事務所サイトでやってみたところ、トップページのニュース一覧がまるごと消えました。最新の助成金情報を更新していたコーナーです。AIには存在しないも同然だったわけです。
もうひとつ、同じ記事で参考になったのが「LLMに直接聞く」方法です。ChatGPTに自分の事務所名を入力して、どんな専門家として認識しているか確認してみました。出てきたのは「労務管理の相談ができる事務所」という正しい記述でしたが、「助成金申請のサポート」は一言も出てきませんでした。助成金の顧問料が全体の収入の3割を占めているのに、その部分がすっぽり抜けていたのです。
顧問先への影響を考えると、他人事ではない
自分の事務所の話だけであれば、まだ「追々直そう」で済むかもしれません。でも顧問先となると話が変わります。特に飲食業の顧問先は採用に力を入れていて、求人媒体と並行して自社サイトからの応募も増やしたいと言っています。従業員が20名ほどの店舗で、正社員の離職が続いたこの2年は採用費だけで年間150万円近くかかった、と社長から聞いています。
その会社のサイトも、同じ状態かもしれません。「職場環境」ページがJavaScriptで動くギャラリーになっていて、写真と一緒に待遇の説明文が表示される仕様です。AIがその部分を読み飛ばしていたら、「どんな職場か」という肝心な情報がAI検索の回答に反映されない。採用候補者がAIに「この会社どんなところ?」と聞いても、まともな答えが返ってこない状態になります。
Jamie Indigoの記事では、防御的なブランド管理の話として「ジョハリの窓」のフレームワークが紹介されていました。自分では発信しているつもりでも、相手には届いていない「隠れた領域」がある、という考え方です。採用サイトで言えば、会社側は待遇を詳しく書いているつもりでも、AIには届いていない、という状況がまさにこれです。
私は士業ですから、直接サイトのコードをいじれるわけではありません。でも顧問先に対しては「ウェブの担当者に確認してもらってほしい点がある」と伝えることができます。特に採用サポートの文脈で話すと、経営者には刺さりやすい。採用費を削りたいなら、せめてAIに正しく読まれる状態にしておく必要があります。
まずは自分の事務所から動く
自分の事務所のサイトについては、JavaScript無効で確認した結果をメモにまとめました。更新頻度が高い助成金情報は、JavaScriptに依存しない形で表示できるように制作会社に相談するつもりです。費用は大きくないはずですが、手を付けるのが遅れていたのは事実です。
労働基準法の改正対応や就業規則の更新は、毎年スケジュールを決めてやっています。サイトの情報がAIに正しく読まれているかどうかも、同じ感覚で定期確認する習慣にすれば管理できそうです。顧問先30社のサイトを全部見るのは現実的ではないですが、採用に課題を抱えている数社から順番に声をかけていこうと思っています。