道具を選ぶとき、自分のどこかが見える気がする

林 美里
林 美里 30代・ フリーランスデザイナー
ラップトップのおすすめ記事を読んでいた。The Vergeのレビュアーが「ほぼ誰にでも勧められるラップトップ」としてまとめたやつだ。MacBook Air 15(M5)が1,149ドル、MacBook Pro 14(M5)が1,500ドル、ゲームもこなしたいならASUS ROG Zephyrus G14が1,900ドルから、という感じで並んでいる。

読みながらふと思ったのが、「道具を選ぶって、結局自分の仕事観を選ぶことだな」ということだった。

ツールを選ぶことと、自分を選ぶことは似ている



フリーランスになって5年。毎年のように新しいAIデザインツールが出てきて、「使わないと競合に負ける」という焦りは正直ある。MidjourneyもAdobe Fireflyも、実際に使ってみると驚くほど早くアウトプットが出る。ラフ案を作るのに半日かけていた作業が、1時間もかからなくなった。

でも、ラップトップ記事を読んでいて引っかかったのは、その選択の解像度だった。レビュアーは「動画編集や大きなデータ処理が必要なら」「Windowsが好みなら」「ゲームも持ち歩きたいなら」と、使い手の目的によってちゃんと分けている。万能の答えなんてないと言いながら、それぞれの「なぜ」を丁寧に整理していた。

AIツールを使うときも、本当はこれと同じ問いが必要だと思う。「なんとなく速いから」じゃなくて、「自分の仕事のどの部分を任せるか」を決めないと、ただ流されるだけになる。

「全部任せると自分が消える」の正体



クライアントにブランディングの提案をするとき、私はまだラフスケッチを手で描く。活版印刷の質感とか、色の温度感とか、そういうものはAIに出力させたものよりも、自分の手が動いた跡のほうがクライアントに伝わると思っているから。根拠は感覚的なものだけど、これが自分のスタイルだという確信は5年でようやく持てた。

AIに任せすぎると「消える」という感覚は、技術的なことじゃなくて、判断の話だと気づいた。どこを人間がやるかを決め続けることが、クリエイターとしての自分を保つことなんだと思う。

ラップトップ選びだって同じだ。MacBook Air一択じゃない理由は、人によって「何を大事にするか」が違うから。安さを取るか、パワーを取るか、修理のしやすさを取るか。その選択を他人に丸投げすると、なんとなく使える道具は手に入っても、自分の仕事に合った道具は手に入らない。

AIツールとの付き合い方も、そこに尽きる気がしている。何を任せて、何は自分でやるか。その線引きを自分で引けているうちは、まだ大丈夫だと思う。

今使っているMacBookがそろそろ5年目に入る。次に買い替えるとき、自分はどんな「なぜ」を持って選べるか。それが今の自分の仕事観の答え合わせになりそうだ。

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