GoogleがAPACで環境AI支援——どの銘柄に織り込まれるか

松田 翔
松田 翔 40代・ 個人投資家
Google DeepMindがアジア太平洋地域で「AI for the Planet」をテーマにしたアクセラレータプログラムを立ち上げた。スタートアップ・研究チーム・非営利団体を対象に、3ヶ月間のメンタリングと最前線のAIモデルを提供する内容だ。キックオフはシンガポールでの対面ブートキャンプ、と発表されている。

このニュースを最初に見たとき、正直、感情は動かなかった。ESG文脈のPR色が強く、短期では株価に効きにくいタイプの話だ。ただ、少し時間を置いて読み直すと、いくつかのシナリオが頭に浮かんできた。

APACでのプレゼンス拡大という変数



GoogleがAPACで動く理由は、単なる環境貢献ではない。中国以外のアジア市場でのAIインフラ覇権を取りに行く動きと重なって見える。シンガポールを拠点に選んだのも象徴的で、東南アジアのテック規制の「ゆるさ」と金融ハブとしての機能を両取りしている。参考記事には「green technologies aren't scaling fast enough」という表現があった。スケールが遅いということは、そこに資金と技術を突っ込む余地が大きいということでもある。

Alphabetの株価チャートを確認したとき、この発表が直接的な上値を作る材料にはなっていなかった。ただ、中長期のファンダメンタル視点では、APACでの規制当局への信頼獲得、政府系プロジェクトへの参入コスト低減という副産物が積み上がっていく。これは数字には出づらいが、無視すると判断がずれる類の変数だ。

環境×AI銘柄の構造をどう読むか



このニュースから連想するポジションは、Alphabet本体よりも周辺に近い。具体的に整理すると、

  • Google Cloudのインフラを使う気候テック・スタートアップへの資金流入(VC経由)
  • プログラムに採択された企業群の中に上場前有望株が混じっているかどうか
  • Googleの動きを受けてMicrosoftやAWSが同種の施策を打つかどうか(競合スキャン)


自分が現役の証券マン時代に学んだのは、大企業の「社会的プログラム」は3〜6ヶ月遅れで競合の株価に圧力をかけることがある、という経験則だ。今回も同じシナリオを想定して動いた方がいい。

AWS・Azure方向の銘柄は現状でも高いバリュエーションにある。Googleがクリーンテック文脈でAPACに食い込むと、同じパイの取り合いが加速する。下値リスクを測るなら、この競争の激化が各社のAPACクラウド売上に出てくる四半期決算を待つしかない。次の決算シーズンまでの間に、静かにポジションを組んでおく価値はある。

為替への波及——AUD・SGDを動かすか



投資家として見逃せないのが、シンガポールドルと豪ドルへの影響だ。APACのグリーンテック投資が活性化すると、域内の設備投資・雇用・資本流入が増える。直接的な為替インパクトは小さいが、累積効果として見ると無視できないシナリオだ。

個人的には今、AUD/JPYのポジションを少し持っている。豪州はこの手のサステナビリティ文脈での政府支出が多く、AIインフラ整備とも絡んでくる。Google DeepMindのプログラムが実際にスケールした場合、豪州の気候テック企業への資金流入が増え、AUDの買い材料になりうる。シナリオとしては尤度は低めだが、無効化できない。

週末に子どもと会って帰った夜、風呂上がりにこのニュースを囲碁の布石のような感覚で眺めていた。序盤の1手が終盤にどう効いてくるか。環境AIというテーマが「投資のシナリオ」として立体的になるのは、おそらく2〜3年先だ。ただ、布石を認識できているかどうかで、そのとき取れるポジションが変わってくる。今の自分のやることは、採択されたスタートアップのリストが公開された時点で素早くスキャンすることだ。

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