Philips Hueのセール記事を読んで、ちょっと手が止まった。
スマートバルブのスターターキットが143ドルから68ドルに、52%オフ。Twilightという睡眠サポートランプは308ドルが262ドルに。正直、Philips Hueってそんなに値引きしないイメージがあったから、これは確かに珍しい。
でも私が気になったのは、価格よりも別のことだった。
デザイナーにとって「光」は素材だ
自分の仕事部屋に戻って、ぼんやり天井を見た。今使っている照明は、独立したときに適当に選んだシーリングライト一択。色温度も変えられないし、夜遅くまで作業すると目が痛くなる。パートナーに「また目真っ赤になってる」って言われるのが月に一度はある。
Philips Hue Twilightの説明文には「サーカディアンリズムに合わせて、自然に目覚め、穏やかに眠れるよう設計されている」とあった。これ、単なるガジェットの話じゃない気がした。光の質が変わると、思考の質も変わる。それはデザインの現場で、ずっと感じてきたことだ。
写真撮影のときの光、プレゼン用の印刷物の色校正、活版印刷でインクの濃度を確認するとき。光が違うだけで「あ、このトーン違う」ってなる瞬間が何度もあった。自分の作業空間の光にだけ、無頓着だったのはちょっと笑える。
AIツールに感じる葛藤と、照明の話がつながった
最近、Midjourneyを使う頻度が増えた。クライアントへの初期提案に使うビジュアルイメージを、以前は自分でスケッチしていた。今はプロンプトを打つと数十秒で5〜6案のビジュアルが並ぶ。
これが、迷う。
速い。きれい。でも、なんか違和感がある。クライアントが「いいね、これで進めましょう」と言ったとき、自分の中のどこかがうっすら寂しくなる。私が選んだわけじゃなく、AIが確率論的に出してきたものを、クライアントが気に入っただけ、という感覚。
ただ、使わないという選択肢も正直難しい。フリーランス5年目、まわりの同世代デザイナーはAdobe FireflyやMidjourneyを使いこなして、提案スピードが格段に上がってきている。私が「手書きスケッチだけで勝負します」と言っても、そこに価値を見出してくれるクライアントは多くない。少なくとも、初期フェーズでは。
それで、照明の話に戻る。
Philips Hue Goのポータブルランプは、Matter対応で「どの主要スマートホームプラットフォームからも操作できる」と書いてあった。標準規格に乗ることで、使い勝手が広がる。これ、AIツールとの付き合い方に似てると思った。
ツールを使うとき、どのプラットフォームに乗るかじゃなくて、自分がどういう意図でそれを使うかが問われる。照明で言えば、Hue Bridgeを設定して「この時間はこの色温度」と決めるのは人間だ。AIツールも同じで、プロンプトに何を込めるか、出てきたものをどう選ぶか、どこで自分の判断を入れるかが、自分らしさの残し方なんだと思う。
それでも「消える感覚」はぬぐえない
先週、ロゴ案を3パターン提案したときのこと。うち1パターンはMidjourneyのアウトプットをベースに、私がかなり手を加えたものだった。クライアントが選んだのは、そのパターン。
「いいですね、手描き感がある」と言われた。
手を加えた部分を褒めてもらったのか、AIが出した元ネタを褒めてもらったのか、自分でもよくわからなくなった。ちょっと怖い、と思った瞬間だった。
でも、それが今の自分の仕事の実態だ。ツールと人間の境目が、どんどん曖昧になっていく。
Philips Hueのセール記事を読んで、まさかこんなことを考えるとは思わなかった。ただ、作業空間の光は変えてみようと思う。環境が思考に影響するなら、そこから整えていくのが順番として素直だ。自分の仕事部屋の光が変わったとき、AIとの距離感についても、何か別の角度から見えてくるものがある気がしている。