AIが次のAIを作る時代、経営陣への説明はどう変わるか

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
正直、この記事を読んで最初に思ったのは「稟議の説明、また書き直しが必要かもしれない」だった。

Anthropicの共同創業者であるジャック・クラーク氏が「2028年末までに、人間が関与しなくてもAIが次世代AIを自律的に研究・開発できる状態になる可能性が60%以上ある」と主張している。根拠として挙げているのが、コーディング能力を測るベンチマーク「SWE-Bench」のスコアだ。2023年時点の最高スコアはわずか2%程度だったのに、2026年4月時点では93.9%に達したという。3年でここまで来るとは、私も正直想定していなかった。

今の稟議資料は1年後に通用しなくなるかもしれない



今期、営業DXの投資計画を経営陣に説明するときに「今後3年間のロードマップ」を作った。でも3年前のAIと今のAIがこれだけ違うなら、3年後のAIを今の感覚で語るのは相当リスクがある。経営陣は「将来性」より「今の効果」を求めがちだが、AIについては逆の問いを立てたほうがいい局面に来ている気がする。「今導入して何が変わるか」ではなく「今導入しなかったら2年後に何を失うか」という切り口だ。

もう一つ印象的だったのが、AIが継続して自律作業できる時間の伸びだ。2022年のGPT-3.5は約30秒規模のタスクしか処理できなかった。それが2026年2月発表のClaude Opus 4.6では約12時間規模のタスクをこなせる段階に来ているとMETRが推計している。30秒から12時間。これはもう「補助ツール」の話ではない。

部下に使わせるときの「説明責任」が変わってくる



私の部署では今、AIツールを部下に試験的に使わせている。今のところ「業務効率化ツール」として社内に説明しているし、それで通っている。でもAIが自律的に判断して長時間タスクをこなす時代になると、「誰が承認して、何をやらせているか」という管理の問い方が変わってくるはずだ。

クラーク氏はこんな懸念も指摘している。AIがAIを繰り返し生成していくと、99.9%の精度のシステムでも500世代後には60.5%まで精度が落ちるという複合誤差の問題だ。AIの出力を人間がチェックしているうちはまだいい。でもAIがAIを管理する構造になったとき、その誤差は誰が見るのか。これは「便利か不便か」ではなく、会社としてのガバナンスの話になる。

セキュリティ要件や稟議プロセスを面倒だと思うことは正直ある。でも今回の記事を読んで、その「面倒なプロセス」がむしろ人間の目が入る唯一のタイミングになるという視点を持ち直した。承認フローは単なる手続きじゃなく、AIの暴走を止めるチェックポイントとして機能する可能性がある。

経営陣への説明より先に、自分が理解し直す必要がある



今の自分の課題は「経営陣をどう説得するか」より「自分がどこまで本質を理解しているか」だと思い始めている。説明資料の説得力は結局、自分の理解の深さに比例する。

あなたの会社では、AIの導入判断を誰がどんな基準でしているか。その基準、2年後も同じで大丈夫だと思うか?

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