毎年プライムデーが来るたびに、なんだかんだでポチってしまう。今年も懲りずに画面をスクロールしていたら、13インチのMacBook Airが949ドル(約14%オフ)になっていた。The Vergeが「コンテンツクリエイターに十分なスペック」と書いていた。正直、自分もそのひとりだよなと思いながら、カートに入れる前に手が止まった。
いま使っているのも数年前のMacで、動作が重くなってきてはいる。ただ、買い替えの判断ってすごく迷う。ハードの問題なのか、それとも制作フローそのものを変えた方がいいのか、ぐるぐる考えてしまう。セールのたびに「これが機会だ」という気持ちと、「何かに流されてないか」という気持ちが同時に来る。
道具を買うより、道具との付き合い方の方が難しい
デザイナーとして独立して5年が経つ。その間に道具は本当に変わった。MidjourneyやAdobe Fireflyが使えるようになって、以前は半日かかっていたビジュアルの方向出しが1時間でできるようになった。クライアントへの提案スピードが変わったし、選択肢を多く見せられるようになった点は素直にありがたい。
でも、「便利」と「自分が消える」の距離がとても近い。Fireflyでアイデアを出すとき、最初の10案くらいはAIが出してくる。その中から選ぶ作業をしているうちに、ふと「これは私の提案なのか」という感覚が抜けていく瞬間がある。パートナーに一度「最近のデザインって、あなたらしくなくない?」と言われて、ちょっと刺さった。
選ぶ目を残すために、あえて遠回りする
去年から、月に一度は活版印刷のワークショップに通っている。アナログの作業を手でやることで、「なぜこの書体か」「なぜこの余白か」を自分の体に問い直す時間になっている。効率とは真逆の時間だけど、ここで考えたことがブランディングの提案に出てきたりする。遠回りが、実は一番の近道だったりする。
AIツールについても、最近は使い方に少しルールを作った。最初のムードボード作成にFireflyを使うのは許容。でも、ロゴの構成案やタイポグラフィの選定は必ず自分でスケッチを先に描く。AIに先に見せると、その方向に引っ張られてしまうから。順番を守るだけで、「自分が考えた」という感覚がかなり変わる。
Midjourneyについては、プロンプトを書く練習自体が制作の一部だと思うようにした。どういう言葉を入力するかに、自分の美意識が出る。それはまだ、AIに替えられない部分だと信じている。ただ、「信じている」という表現を使っている時点で、ちょっと怖いとも思っている。
プライムデーの画面に戻る
ROG ZephyrusのゲーミングPCが37%オフで1,450ドルというのも出ていた。さすがに買わないけど、こういう価格の動きを見ていると、ハードウェアの価値ってどんどん流動的になるんだなと感じる。道具の値段が下がるほど、使い手の「目」や「判断」の価値は相対的に上がる。そう考えると、AIに頼りすぎることへのジレンマも、悪い話ではないのかもしれない。
MacBook Airはけっきょく保留にした。先にペンとノートで制作フローを整理してから、それでもスペックが足りなければ買い替えを考えようと思った。道具は、自分の仕事の輪郭を決めてからでも遅くない。
自分のデザインの「癖」が何か、最近ちゃんと言語化できているだろうか。プライムデーのスクロールで、妙にそんなことを考えさせられた。