先週、アリゾナ州立大学の研究を伝える記事を読みました。フェニックス都市圏にある4つのデータセンター周辺で気温を実測したところ、風下側の住宅地が風上側より最大2.2℃高くなっていた、という内容です。CyrusOneというデータセンターの周辺では、風下側の住宅地が500メートルにわたって0.8℃高い状態が続いていました。数字だけ見るとたいしたことなさそうですが、フェニックスの夏は42℃超えです。その環境で0.8℃はかなり体感に効きます。
うちの会社はクラウドをかなり使っています。営業系のシステムだけで、国内外のクラウドベンダー3社と契約があります。AI活用のパイロットも昨年度から走っていますし、今期はさらに予算を取っています。「AIを使う」という話は社内でも経営陣からも前向きなトーンで語られがちです。ただ、そのAIを動かすデータセンターが近隣住宅地の熱環境を変えているという話は、正直あまり議論されてこなかった視点でした。
DX投資の稟議を書くとき、私が一番苦労するのは経営陣への説明です。「何が良くなるか」「コストはいくらか」「リスクは何か」を整理するわけですが、これまでリスクとして書いてきたのはセキュリティ、法令対応、ベンダーロックイン、あとは組織的な定着リスクくらいでした。環境負荷という切り口が稟議書に入ってきたことは、少なくとも私のキャリアではほぼありません。
でも考えてみると、うちの会社は製造業です。工場の排熱、CO2排出量、廃棄物処理、こういった外部コストに対して投資家やメディアから問われる機会は以前より増えています。自分たちの生産活動に伴う環境負荷を開示するスコープ1・2の対応は、CSR部門が既に走っています。ところが、クラウドやAIを使う際に外部のデータセンターが排出する熱や電力消費、いわゆるスコープ3に近い部分は、正直まだ「誰かの話」として扱っている節があります。
NTT PH1一施設で約4万世帯分に相当する熱を排出しているという数値を見たとき、これは他人事ではないと感じました。うちが使っているクラウドリソースも、どこかのデータセンターで熱に変わっています。
この話を部下にも共有しました。うちのチームには若手が多く、AIツールの導入評価を担当している社員が数名います。彼らが普段ベンダーの提案を受けるとき、評価項目は機能・価格・サポート・セキュリティが中心です。今後はデータセンターの運用方針、特に再生可能エネルギーの利用率や冷却方式についても確認項目に加えてもいいのではないかと話しました。
あるメンバーが「でもそれを確認しても、稟議書のどの欄に書けばいいんですかね」と聞いてきました。正直なところ、今の稟議フォーマットには当てはまる欄がありません。リスク欄に書くか、備考として添付するか。そこが社内整備の課題だと気づきました。
CSR部門と情報システム部門、そして私たちDX推進部門が連携して、クラウドベンダー評価に環境項目を組み込む枠組みを作る必要がある。これは今すぐできる話ではないですが、今年度中に検討のテーブルに載せることはできます。息子が大学でサステナビリティを専攻しているせいか、最近こういう話を家でもよく聞きます。現場の視点と世代の視点が重なる機会が増えてきました。
参考記事の研究チームは「データセンターは社会に本質的に重要な存在だ」とした上で、住宅地への排熱を減らす取り組みを進めたいと述べていました。使う側の企業も、そのコストをどう認識するか、少しずつ問われていくのだと思います。次回のベンダーレビューで、担当メンバーに環境開示項目を一つ追加で確認させてみるところから始めます。
うちの会社はクラウドをかなり使っています。営業系のシステムだけで、国内外のクラウドベンダー3社と契約があります。AI活用のパイロットも昨年度から走っていますし、今期はさらに予算を取っています。「AIを使う」という話は社内でも経営陣からも前向きなトーンで語られがちです。ただ、そのAIを動かすデータセンターが近隣住宅地の熱環境を変えているという話は、正直あまり議論されてこなかった視点でした。
投資対効果の説明に「外部コスト」が入ってくる時代
DX投資の稟議を書くとき、私が一番苦労するのは経営陣への説明です。「何が良くなるか」「コストはいくらか」「リスクは何か」を整理するわけですが、これまでリスクとして書いてきたのはセキュリティ、法令対応、ベンダーロックイン、あとは組織的な定着リスクくらいでした。環境負荷という切り口が稟議書に入ってきたことは、少なくとも私のキャリアではほぼありません。
でも考えてみると、うちの会社は製造業です。工場の排熱、CO2排出量、廃棄物処理、こういった外部コストに対して投資家やメディアから問われる機会は以前より増えています。自分たちの生産活動に伴う環境負荷を開示するスコープ1・2の対応は、CSR部門が既に走っています。ところが、クラウドやAIを使う際に外部のデータセンターが排出する熱や電力消費、いわゆるスコープ3に近い部分は、正直まだ「誰かの話」として扱っている節があります。
NTT PH1一施設で約4万世帯分に相当する熱を排出しているという数値を見たとき、これは他人事ではないと感じました。うちが使っているクラウドリソースも、どこかのデータセンターで熱に変わっています。
部下への共有と、ベンダー評価への組み込み
この話を部下にも共有しました。うちのチームには若手が多く、AIツールの導入評価を担当している社員が数名います。彼らが普段ベンダーの提案を受けるとき、評価項目は機能・価格・サポート・セキュリティが中心です。今後はデータセンターの運用方針、特に再生可能エネルギーの利用率や冷却方式についても確認項目に加えてもいいのではないかと話しました。
あるメンバーが「でもそれを確認しても、稟議書のどの欄に書けばいいんですかね」と聞いてきました。正直なところ、今の稟議フォーマットには当てはまる欄がありません。リスク欄に書くか、備考として添付するか。そこが社内整備の課題だと気づきました。
CSR部門と情報システム部門、そして私たちDX推進部門が連携して、クラウドベンダー評価に環境項目を組み込む枠組みを作る必要がある。これは今すぐできる話ではないですが、今年度中に検討のテーブルに載せることはできます。息子が大学でサステナビリティを専攻しているせいか、最近こういう話を家でもよく聞きます。現場の視点と世代の視点が重なる機会が増えてきました。
参考記事の研究チームは「データセンターは社会に本質的に重要な存在だ」とした上で、住宅地への排熱を減らす取り組みを進めたいと述べていました。使う側の企業も、そのコストをどう認識するか、少しずつ問われていくのだと思います。次回のベンダーレビューで、担当メンバーに環境開示項目を一つ追加で確認させてみるところから始めます。