デジタルギフトで気づいた「選ぶ自由」の話

林 美里
林 美里 30代・ フリーランスデザイナー
母の日のプレゼントをどうしようか迷って、The Vergeの記事を読んだ。「ラッピングできないものに罪悪感を覚えるのは自分だけじゃない」という一文が、妙に刺さった。

その記事では、Disney Plusのギフトカードが25ドルから500ドルまで買えること、映画から『The Bear』みたいなドラマまで幅広く使えることが紹介されていた。映画・ゲーム・音楽・本など、興味別に選べる構成になっていて、「お母さんが何を好きか考えて選ぶ」という設計になっていた。

そこで、ふと思ったことがある。プレゼントの話なのに、これって自分の仕事の話とそっくりだな、と。

「選ぶ自由」を渡すことの意味



デジタルギフトの良さは、相手が自分で選べることだと記事は言う。渡す側の趣味を押しつけず、受け取る側に決定権がある。それが「便利さ」と「気遣い」を両立させている、という話だった。

これを読んで、MidjourneyやAdobe Fireflyを使ったクライアントワークのことを考えてしまった。AIが出してくるビジュアルって、ある意味「大量の選択肢」なんだよね。私がプロンプトを入れれば、10パターンでも20パターンでも一瞬で出てくる。クライアントは「選ぶ自由」を得る。じゃあ、私は何をしているんだろう、と。

正直、最初にAIツールを業務に入れたとき、「これで手が速くなる」としか思っていなかった。実際、ラフ案の段階でクライアントに見せるビジュアルの量は増えた。「こんなにバリエーション出るの?」って驚かれることも増えた。でも、半年くらい使い続けて気づいたのは、選択肢が多いこととクオリティが上がることは別の話だということ。

AIが「消耗」に変わる瞬間



AIで大量に出して、クライアントが選んで、私がブラッシュアップする。この流れ、一見効率よさそうだけど、実は消耗が大きい。選択肢が多すぎると、クライアントも迷う。そして迷ったとき、「どれが正解ですか?」と私に戻ってくる。結局、私が全部判断することになる。

デジタルギフトの記事では、受け取る側の「興味別」にカテゴリが整理されていた。映画好き、ゲーマー、本好き、という具合に。つまり、選択肢を渡すだけじゃなく、「あなたはこっちだよね」という前提が設計に込められていた。

それが、私に足りていないものだった。AIで選択肢を増やす前に、「このクライアントにとって何が正解か」を自分の中で決めておく必要がある。その判断軸を持っているのが、デザイナーとしての自分の存在意義なんだと思う。

AIが出す選択肢は、あくまで素材だ。どの素材を選ぶか、なぜそれが正解なのかを説明できるのは、クライアントのことを理解している人間だけ。MidjourneyもAdobe Fireflyも、そのための道具に過ぎない。全部任せると、自分がどこにいるのかわからなくなる。その感覚は、ギフトカードを選ぶ手間を省きすぎたとき、相手への気遣いが消えるのと似ていると思った。

次に誰かへのプレゼントを選ぶとき、「相手が何を好きか考えた上で選択肢を渡す」ことを意識してみようと思う。それはたぶん、クライアントにAIのアウトプットを渡すときにも、同じだけ必要なことだから。

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