正直に言う。AIだのLLMだのって話を息子から聞かされるたびに、「うちみたいな田舎の土木屋には関係ないべ」と右から左に流してきた。
親父の代から50年、東北の現場で鍬を入れてきた会社だ。ホームページだって、10年前に県の補助金で業者に作ってもらったまま、ほとんど放置している。従業員45人、仕事の9割は地元の公共工事と民間の造成。営業はほぼ口利きと指名だから、ネットで集客しようなんて発想が正直なかった。
ところが先週、息子が「これ読んでみて」と送ってきた記事が妙に引っかかった。
「サイトをLLMの視点で見る」という発想
記事の内容は、AIがウェブサイトをどう読み取るか、というSEOの専門的な話だ。LLMのためのテクニカル最適化とかいうやつで、難しいことが山ほど書いてある。半分は読んでも意味がわからんかった。
ただ、1か所だけ目が止まった。「Screaming Frogというツールを使って2通りのクロールを実行し、JavaScriptをレンダリングした場合としない場合で何が見えているかを比べる」という部分だ。要するに、自分のサイトがAIから見てどう映っているかを確認しろ、という話だ。
試しに、息子に頼んで自社サイトをそのツールで見てもらった。わかったのは、うちのサイト、ほぼ何も読み取れていないということだった。施工実績のページは全部JavaScriptで動いているとかで、AIどころか古いクローラーにもほとんど見えていない状態らしい。
記事には「重要な価値提案が表示されなければ、モデルは十分に理解できない」とある。うちでいえば「東北・宮城エリアでの法面工事や造成工事の実績」がそれにあたるわけだが、それがまるっと見えていない。
「うちには関係ない」が崩れてきた理由
正直、それを聞いてもまだ「で、うちに客が来なくなるのか?」という疑問はあった。先述の通り、うちの受注は口コミと指名がほとんどだ。
だが息子がこう言った。「若い担当者が初めてうちに発注しようとするとき、今はまずGoogleかAIで会社を検索するんだよ。そこで実績が何も出てこなかったら、信用されないまま終わる」と。
それを聞いて、少し考えた。うちの親父の時代は、人づてで話が来て、現場を見てもらえれば信用が生まれた。でも今の発注担当者、特に30代の若い人間は、まず画面で判断する。そこで何も出てこないのは、現場で名刺も持たずに挨拶するようなものだ。
記事の中に「ジョハリの窓」を使ったブランド管理の話が出てきた。「自分のブランドが顧客にどう認識されているかについて、自分が見落としているもの」を「盲点」と呼んでいる。うちの場合、まさにそこだ。地元での信頼はあると思っていたが、画面の向こうからはほぼ無名に近い状態だったわけだ。
2024年問題で時間外の現場管理がしんどくなってきた。若手の採用も毎年苦戦している。そんな中で「AIと関係ない」と言い続けるのは、さすがに無理筋かもしれない。
まず息子に任せてみることにした
今すぐ自分でどうこうできる話ではない。スマホはLINEとYouTubeがあれば事足りると思っているし、システム周りは息子に丸投げしてきた。それは変わらない。
ただ今回は「関係ない話だろ」で終わらせなかった。施工実績のページをAIにも読める形に直すこと、今の工事写真や技術資料をちゃんとサイトに載せること。それを息子に頼んで、今月中に段取りを組んでもらうことにした。
記事にあった「重要なコンテンツをサーバーサイドレンダリングで配信する」という方法を使えばいいらしい。細かい話は息子に任せる。自分がやるのは、古い施工写真を引っ張り出して整理することだ。それくらいならできる。
東北の片隅で45人が汗かいて作った実績が、画面の向こうで消えていたとしたら、もったいない話だ。親父が聞いたら「なんでもっと早くやらなかったんだ」と言うだろう。
あなたの会社のサイト、AIからちゃんと見えているだろうか。