CapCutとGeminiの提携を見て、社内ツール選定の基準を考えた

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
先週、CapCutがGoogleのGemini と提携したというニュースを読みました。Geminiアプリ内からCapCutの動画・画像編集機能を直接呼び出せるようになる、という内容です。生成から編集までのワークフローを一気通貫でつなぐ、という方向性は理解できます。ただ私が最初に考えたのは「これ、うちの社内で使えるか?」という点でした。

CapCutはByteDance、つまり中国企業が開発したツールです。そしてGeminiはGoogleのサービスです。この2社が組んだという事実を聞いたとき、率直に言ってセキュリティ審査部門の反応が頭をよぎりました。うちは製造業で、設計データや顧客情報を扱う部署が多い。情報システム部門とセキュリティ委員会の壁は、ツールの機能が優れているだけでは越えられません。

「便利そう」では稟議は通らない



部下が25名いると、毎月のように「このツール使っていいですか?」という話が上がってきます。最近では営業資料の動画化や、製品紹介のショート動画を作りたいという声が増えてきました。現場としては当然の発想で、実際にCapCutのような直感的な動画編集ツールは魅力的に映るはずです。ただ稟議に乗せる段階になると、話はまったく別になります。

経営陣が求めるのは投資対効果の説明だけではありません。データの取り扱い、契約形態、国内外のサーバー所在地、インシデント発生時の責任範囲。こうした点を一枚の説明資料にまとめ、情報システム部門と法務のハンコを先に取ってから稟議を起こす、というのが実態です。正直、このプロセスに3〜4ヶ月かかることもあります。

その間に現場の熱量が冷める、というのは過去に何度も経験してきました。3年前、ある動画制作ベンダーへの外注化を提案したとき、承認が下りるまでに5ヶ月かかりました。現場担当者はその間にやり方を変えてしまい、結局承認された枠組みをほとんど使わないまま終わった、という苦い記憶があります。

Geminiとの連携が意味すること



今回のCapCutとGeminiの提携でいくつか気になる点があります。まず、Geminiアプリ側のインターフェースからCapCutの機能を呼び出す形になる、ということ。これは見かけ上は「Googleのサービスを使っている」ように見えますが、データがどこを通り、どこで処理されるのかは別の話です。提携の発表では「生成から編集までのワークフロー統合」と説明されていますが、社内承認の観点から見れば、データの流れが増えることは審査の対象が増えることを意味します。

こうした連携型ツールの評価が難しいのは、責任の所在が分散することです。問題が起きたとき、どのベンダーに何を問い合わせるか。SLAをどちらと締結するか。この点を詰めずに導入を進めると、インシデント発生時に動けなくなります。ベンダー選定の責任者として、ここは必ず確認します。

一方で、Googleがこうした外部連携を積極的に進めているという事実は、業界の方向性として見ておく価値があります。AIアシスタントが単独で完結するのではなく、専門ツールと組み合わせて使う形が標準化しつつある。自社の営業DX戦略を組む上で、この流れを無視するのも違うと感じています。

部下への向き合い方を変えてみる



今週、部下の一人が「動画コンテンツで営業資料を補完したい」と相談に来ました。CapCutを使いたいという話ではなく、もう少し抽象的な要望でした。この手の話を「まずセキュリティ審査から」と即座に返すのが私の癖で、妻にも「あなたは最初に壁を作る」と言われます。

今回は少し考え方を変えて、まず「何を達成したいか」を聞いてから、次に「どのツールが社内審査を通りやすいか」を一緒に整理してみようと思っています。既承認のツールで同様のことができないか、という順序で探れば、3〜4ヶ月待たせることなく動かせる可能性もあります。CapCutとGeminiの提携ニュースが、そんな当たり前のことを改めて気づかせてくれました。

現場の熱量と社内プロセスの速度差を、どう埋めるか。これは今も私が答えを出しきれていない問いです。

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