AIが「作業時間33%削減」を実現した話を社労士目線で読んだ

伊藤 健太
伊藤 健太 40代・ 社会保険労務士
子ども服ブランドのF・O・インターナショナルが、AIエージェントを導入してキャンペーン作成時間を33%短縮し、購入コンバージョンを4.8倍に伸ばしたという記事を読んだ。
マーケティングの話ではあるのだけど、読みながら「これ、うちの仕事と構造が同じだ」とずっと思っていた。

記事によると、導入前の現場担当者は「数多くのキャンペーンを並行して実施しているため、セグメントの精緻化にあと一歩辿り着けない」状態だったらしい。
これ、社労士事務所でいえば「顧問先30社分の給与計算や手続きを並行して回しているせいで、各社の労務課題に深く向き合う時間が取れない」という状態と完全に重なる。

「作業に追われる」は業種関係なく同じ



記事の中でAppierのトン氏がこんなことを言っている。「現場のマーケターは、キャンペーンの設計から制作物の管理まで、作業に追われています。施策を細分化して成果を上げたいという意欲はあっても、物理的な時間が足りないのです」と。
これを読んで苦笑いしてしまった。社労士として10年やってきて、まったく同じセリフを自分でも言いたくなる場面が何度もあった。
助成金の申請書類を丁寧に仕上げたい、顧問先の採用書類を一緒に見直したい、でも今日も給与計算の締め日が来る。

AIが変えるのは「作業量」じゃなくて「判断の余白」



F・O・インターナショナルのケースで面白いのは、AIが単純に作業を減らしたというより、「一人ひとりに最適なタイミングで届ける」という精度の高い判断をAIが担うようになった点だ。
ある顧客には週末の朝、別の顧客には平日夜10時に配信する、という個別最適をAIがやっている。
人間がやろうとしたら、とても30社分は回せない判断量だ。

社労士の仕事に置き換えると、「この会社には今月、育休取得促進の助成金を案内するタイミングだ」「あの会社は来月36協定の更新だから先に声をかけよう」という判断が、毎月30社分必要になる。
実際には対応を漏らしたり、思い出したときにはタイミングが過ぎていたりする。
AIがそこを拾ってくれるようになれば、自分は各社の経営者と何を話すかを考えることに集中できる。

今この記事を読みながら、自分がやりたいのは「手を動かすこと」じゃなく「顧問先の労務リスクを先に潰すこと」だと改めて思った。
給与計算のチェックに2時間使うより、採用書類の雛形を見直す1時間のほうが、顧問先にとって価値が高い場面は正直多い。

ただ、AIを使う側の準備も必要だとも感じた。
F・O・インターナショナルがうまくいった理由の一つとして、実店舗とECのデータを統合するCDP(Customer Data Platform)を先に整えたことが挙げられている。
データがバラバラなままでは、AIも何も判断できない。
社労士の仕事でいえば、顧問先ごとの情報が自分の頭の中だけにある状態では、AIに引き継ぎようがない。

まずは顧問先30社の「今月やること・来月やること」をどこかに書き出して整理するところから始めてみようと思っている。
AIに任せる前に、自分の仕事を可視化する。それが先だと気づいた。

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