Googleの投資発表を読んで、DX稟議を考えた

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
先日、Googleがミズーリ州に新しいデータセンターを建設するという発表を読みました。モンゴメリー郡に拠点を置き、電力会社のAmerenと組んで500メガワット超の追加容量を確保するという内容です。さらに2000万ドルのエネルギー影響基金を設立して、地域の光熱費削減にも取り組むとある。規模の話として読んでいたのですが、途中で少し違う視点が頭をよぎりました。

Googleの発表文の中に「データセンターは直接雇用1件につき地域で9件の雇用を生む経済エンジンだ」という一節があります。これを読んで、自分が毎年作っている稟議書の構成を思い出しました。IT投資の費用対効果を経営陣に説明するとき、私はどうしても直接効果だけを書きがちです。「営業担当1人あたりの提案書作成時間が月15時間削減される」といった数字です。でも、Googleが地域経済への波及効果をきちんと数値化して語っているのを見ると、自分たちの説明が少し手狭だったかもしれないと感じます。

波及効果を「見えない費用」から逆算する



営業DXの投資対効果を説明するとき、直接効果以外で経営陣がピンとくる数字はなにか。それを最近ずっと考えています。たとえば、今うちの部署では部下25名のうち12名が日常的に提案資料を作っています。1人が月に費やす非付加価値作業を仮に20時間とすると、年間で2400時間相当が「見えない費用」として消えている計算になります。

この数字を使って先週、社内の若手と話をしました。入社4年目の田村くんという担当で、彼は毎週火曜日に競合他社の資料収集と社内報告書の整形に半日使っていると言っていました。「それ、自分の営業活動に使えたらどうですか」と聞いたら「正直、2件は余分に商談入れられると思います」という返事でした。2件×平均受注率×平均受注額、という計算をすると、経営陣が聞きたいKPIの言語に近づきます。

ベンダー提案の評価軸をどこに置くか



ちょうど今期、営業支援ツールの更改時期が重なっています。ベンダーから3社ほど提案書が届いていて、それを評価する立場にいます。どれも機能面はそれほど大差がない。差が出るのは、社内のセキュリティ要件への対応と、導入後のサポート体制です。

うちの情報システム部門はISO 27001の認証を維持していて、外部クラウドサービスに対しては以下のような確認を必ず行います。

  • データの保存場所が国内か
  • アクセスログの保持期間と出力形式
  • SSOへの対応状況


この3点をクリアできないベンダーは、機能がどれだけ優れていても社内調整の段階で止まります。過去に一度、海外ベンダーの魅力的なツールを持ち込んだとき、情報システム部門の審査で4ヶ月かかって結局見送りになった経験があります。あのときの苦い記憶があるので、今は最初の提案ヒアリング時点でセキュリティ要件の確認を先に済ませるようにしています。

Googleの発表に戻ると、同社はAmerenとの「Capacity Commitment Framework」という契約枠組みを使って自らのインフラコストを自前でカバーする設計にしていると書いてあります。外部に負担を押しつけない、という設計思想です。ベンダー選定でも似た視点は使えます。導入後の追加費用が発生しやすい構造かどうか。初期費用だけ安くて運用でコストが跳ね上がるパターンは、経営陣への説明責任という意味でも避けたい。

先日の週次ミーティングで部下たちに「ベンダー評価は3年間の総コストで考えてください」と伝えました。すると経理出身の中堅メンバーが「それなら比較表のフォーマットを変えましょう」と言ってくれて、初期・年次・更新コストを別行に分けた表を翌日には作ってきました。こういう動きが出てくると、部署全体の目線が少し上がった感覚があります。

Googleの話は遠い国の大規模投資の話ですが、読み方次第で自分の稟議資料の構成を見直すヒントになります。500メガワットの電力契約の話が、田村くんとの火曜日の会話につながる。そういう読み方が、この仕事では意外と役に立ちます。

無料相談受付中

AI開発・DX推進についてお気軽にご相談ください。オンライン30分から。

無料相談を申し込む