生成AI投資の95%がROI未達——市場が織り込んでいるか

松田 翔
松田 翔 40代・ 個人投資家
MIT Project NANDAが2025年7月に公表した「The GenAI Divide」レポートを読んで、少し考え込んでしまった。企業の生成AI関連投資300〜400億ドルに対して、95%の組織で測定可能なROIが得られていない、という数字が出ている。

これ、株式市場はちゃんと織り込んでいるのだろうか。

AI銘柄の株価と「実態」のズレをどう読むか



AI関連銘柄を追っていると、どうしても「導入企業が増えている=収益に直結する」という前提で動いているチャートが多い。でも実態はかなり違う。生成AIを導入した国内企業の70.3%が「リテラシー不足」を最大課題として挙げているというデータもある。ツールを入れただけで現場が使いこなせていない状態が大半だ。

つまり、AIソフトウェアベンダーの売上は立つ。ライセンス料は課金される。でも導入先の企業が本当に生産性向上や利益改善につなげられているかどうかは、また別の話になる。

これはバリュエーションを考えるときに無視できない視点だと思っている。AIツールを売る側の企業と、AIを使って業績を上げようとしている企業では、投資判断のロジックが根本的に異なる。

失敗の構造が分かると「どの企業が勝つか」が見えてくる



レポートが整理している失敗パターンを見ると、戦略・組織・技術・運用の4層で連鎖的に問題が起きている構造が浮かび上がる。PoC(概念実証)が本番環境に繋がらずに止まるケース、KPIを設定しないまま導入して効果測定ができないケース、こういった問題が重なって投資が空振りになっている。

市場参加者としてこれを読んで思うのは、「失敗構造を乗り越えられる企業かどうか」が今後の株価の分岐点になるということだ。具体的に気にするポイントを整理するとこうなる。

  • 経営層がAI戦略のKPIを決算説明会で具体的に語っているか
  • 導入ツールの数ではなく、業務プロセスへの統合度合いを開示しているか
  • AI人材への投資額や育成施策を中期計画に盛り込んでいるか


これができている企業は少ない。でも、できている企業を見つけたときのアルファは大きい。

為替への影響線も読んでおく価値がある



もう一つ、ドル円との絡みでも考えておきたい。米国企業の生成AI投資が300〜400億ドル規模で動いていて、その大半がROI未達という状況が続くと、いずれ投資の見直し圧力が出てくる。これがナスダックのAI関連銘柄の調整を通じて、リスクオフ・ドル安方向への圧力になるシナリオはあり得る。

逆に言えば、どこかのタイミングで「ROIが出始めた」という企業の決算サプライズが出ると、それがセンチメントの転換点になる可能性がある。そのシグナルを早めに拾うために、今は失敗パターンの裏側にある「成功条件」を理解しておく段階だと思っている。

95%が失敗しているなら、5%に入る企業を探す。そういう視点でAIニュースを読み続けるつもりだ。

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