生成AI導入リスクを経営陣にどう説明するか

石井 雅之
石井 雅之 50代・ 大手製造業・部長
先日、生成AI導入の10大リスクをまとめた記事を読んだ。読み終えて最初に思ったのは「これ、稟議書に全部書かなきゃいけないやつだ」という妙な使命感だった。

経営陣から「生成AIで全社DXを進めろ」と言われている。でも現場を見ていると、リスクの話をちゃんと整理しないまま走り出すのが一番怖い。情報漏洩や著作権トラブルが起きたとき、責任を問われるのは推進担当者の自分だ。

事例を見て「他人事じゃない」と感じた



その記事には具体的な事例が並んでいて、読んでいて背筋が伸びた。2023年にサムスン電子でソースコードが生成AIに流出した件、2025年にはマクドナルドの採用ボットが個人情報を漏洩した件。どちらも「業務で使う」という文脈でAIを触った結果だ。さらに2025年のMicrosoft 365 Copilotに「EchoLeak」という脆弱性が見つかった話は、ツールを信頼しきっていたら終わりだと改めて思い知らされた。

うちの部でも、CopilotやChatGPTを試し使いしている部下が何人かいる。止めはしていないけれど、入力している内容を把握できているかというと正直怪しい。「シャドーAIの蔓延」という言葉がリスクの一つに挙がっていたが、まさにその状態に近い。

経営陣への報告書、どう組み立てるか



こういうリスクを経営陣に説明するとき、「危ないからやめましょう」では話にならない。「管理できるから進められます」というセットで持っていかないと、稟議は通らないし、そもそも推進担当の存在意義がない。

記事の中でリスクは3つに分類されていた。利用者側のリスク、サービス提供側のリスク、社会・倫理面のリスクだ。この整理は経営陣向けの説明にそのまま使える。法務や情シスを巻き込んだガバナンス体制とセットで提示できれば、「リスクを把握した上で推進している」という姿勢が伝わる。

私が今考えているのは、次の3点を報告書の骨格にすることだ。

  • どんなリスクが存在するか(10大リスクの概要)
  • そのうち自社で今すぐ対処すべき優先3項目
  • 法務・情シスと合意した対策のステータス


「全部対処します」ではなく「優先順位をつけて管理します」の方が、経営陣には刺さる。完璧なゼロリスクを目指すふりをするよりも、現実的な管理体制を見せる方が信頼される。

部下に使わせる前にやるべきこと



もう一つ気になっているのが、部下25名への展開方法だ。ツールを配って「使っていいよ」だけでは、プロンプトインジェクションやハルシネーションのリスクを誰も意識しないまま動き出す。ハルシネーションとは、AIが事実と異なる情報をもっともらしく出力してしまう現象のことで、営業資料に誤情報が混入するリスクは想像以上に高い。

最低限、「社外秘情報を入力しない」「出力内容を必ずダブルチェックする」という2点を徹底するだけでも、被害は大きく減らせる。まずこの2点をルール化して、来月の部内ミーティングで周知するつもりだ。ルールを作ること自体が、有事のときに「組織として対応していた」という証拠にもなる。

リスクを知っていて動くのと、知らずに動くのとでは、何かあったときの対処速度がまるで違う。自分の役割は「止める人」じゃなく「転ばないように走れる人」だと思っている。

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