結論から言うと、AIエージェントの話を聞いて真っ先に思ったのは「うちの8人でどの業務に当てるか」だ。製造業の故障診断とか航空会社の生成AIプラットフォームとか、事例としては面白いけど参考にならない。自分たちのフェーズに引き寄せて考えないと意味がない。
AINOWの記事で整理されていた定義を使うと、AIエージェントとは「目的を伝えるだけで自ら計画・実行するAI」だ。従来のRPAとの一番の差はここで、RPAは「決まった手順を繰り返す」ものだが、エージェントは「状況を読んで判断する」。非定型業務まで射程に入ってくる、というのが要点だった。うちでClaudeを業務全面導入して1年になるが、それでもまだ「自分でやった方が早い」と感じる仕事がいくつか残っている。そこがまさにエージェントの出番かもしれない。
セールスとカスタマーサポートに先に刺す
今うちのチームで一番ボトルネックになっているのはセールスの初動だ。問い合わせが来てから最初の返信、企業リサーチ、提案書のドラフト、この3点セットが毎回手作業になっている。担当の大澤が「1件あたり2〜3時間かかってます」と言っていたのが気になっていた。売上に直結する仕事なのに、準備段階で時間が溶けている。エージェントがメール作成・企業リサーチ・初稿まで動けるなら、ここのROIは計算しやすい。
カスタマーサポートも同じだ。今は月に40〜50件の問い合わせをCS兼任のメンバーが対応しているが、そのうち6〜7割は同じ質問の繰り返しだと前から感じている。問い合わせ対応のエージェント化はAINOWの記事にも「自動化できる業務」として最初に挙げられていた。うちの規模ならまずここから試す方が話が早い。
採用と投資家対応には慎重に使う
採用と資金調達については、エージェントの使い方を間違えると痛い目を見ると思っている。投資家へのデッキや採用候補者へのメッセージは、相手が「自動生成っぽい」と感じた瞬間に信頼が飛ぶ。あるシードラウンドの投資家に「あのメッセージ、Claudeで書いた?」と笑いながら聞かれたことがある。それ以来、仕上げは必ず自分で手を入れるようにした。
一方、情報収集と下書きはエージェントに任せていい。競合他社の資金調達動向、市場サイズのデータ収集、LP候補のリサーチ、このあたりはエージェントに先に走らせて自分がレビューする形が合っている。GTMの資料づくりで調査に使う時間が3分の1くらいになれば、それで十分だ。
採用でも同様で、JDの初稿生成やスカウト文の叩き台はエージェントでいい。ただし「この人に送りたい」という判断と、最後の文章の温度感は自分で調整する。先月、エンジニア採用で試しにエージェント生成のスカウト文をそのまま送ったら返信率が下がった。そこから学んで今は「エージェントが作った下書きを自分が書き直す」というフローに落ち着いている。
8人規模なら「何を自動化しないか」を先に決める
記事の中に「導入の際は自社の業務に合った範囲から着手すれば、限られた人員でも生産性を底上げできる」という趣旨の話があった。これは本当にそうで、スタートアップが大企業の事例をそのままパクりにいくのは失敗パターンだ。うちは8人しかいない。全員がPMFに関わっていて、誰一人「この人だけに任せておける定型業務」が存在しない。だからこそ「エージェントに渡していい仕事」の線引きを先に決めないと、ツールだけ入れて現場が混乱する。
自分の中での今の仮説はこうだ。
- 渡していい仕事: 初動リサーチ、ドキュメント下書き、定型問い合わせ対応、議事録
- 渡してはいけない仕事: 投資家・候補者・顧客との最初の温感のある接触、PMFの判断材料の解釈
来週、チームでこの線引きを30分で決めてしまう。ツールの選定はその後でいい。どのエージェントを使うかより、何に使うかを先に固める方が絶対に速く動ける。あなたの会社の「渡せる仕事リスト」はもう作ってあるだろうか。