フラーが公開した「アプリ市場動向レポート2026年Q1」を読んで、少し驚きました。ChatGPTやGrok、Microsoft Copilotなどが入る「仕事効率化」カテゴリのアプリ利用時間が、前年同期比で47.3%増という数字だったんです。しかも、ChatGPTは非ゲームアプリの売上ランキングで6位にランクインしたとのこと。正直、「へぇ、そこまで来たか」と思いながら読んでいました。
私は社労士として開業して10年になります。顧問先は現在30社ほどで、製造業あり、飲食チェーンあり、小売の個人事業主ありと、業種はかなり幅広いです。その中で最近、顧問先の担当者から「ChatGPTで就業規則の条文の意味を調べています」とか「助成金の申請要件をAIに聞いてみました」という話を聞く機会がぐっと増えました。1年前はそういう話がほとんどなかったので、利用時間47.3%増というデータは、自分の肌感覚とも一致しています。
AIで調べた情報をそのまま信じてしまうリスク
顧問先からAI絡みの話を聞くたびに、私が気にしているのはひとつです。労働法は改正頻度が高く、AIが学習しているデータが最新の法令に対応していないケースがあります。たとえば、2024年4月に施行された時間外労働の上限規制の適用猶予業種の取り扱いや、育児介護休業法の直近の改正内容など、細かい論点では「AIが古い情報を答えてしまう」という場面が実際に起きています。
先日、飲食チェーンを3店舗経営している顧問先の担当者から相談を受けました。「ChatGPTで調べたら、この場合は残業代の計算方法がこうなると出てきたんですけど、合ってますか?」という内容でした。確認してみると、労働基準法第37条の計算ベースについての説明は概ね正確でしたが、その会社固有の変形労働時間制との絡みについては、AIは何も触れていませんでした。就業規則上、その会社は1カ月単位の変形労働時間制を採用していたので、そこを無視した計算では実態と乖離が生じます。
AIが間違えたというより、「聞き方が不十分だった」という話でもあります。ただ、それを担当者が自分で気づくのは難しい。そこが現場の実情です。
AIが得意な部分を正しく使ってもらうために
私自身、助成金の要件整理や、ひな形の文章チェックにはChatGPTを使い始めています。キャリアアップ助成金の申請書類をつくる前に、要件をリスト化して抜け漏れがないか確認する使い方は、かなり手が速くなりました。顧問先への説明資料を作るときの文章校正にも役立っています。
ただ、使い方には少し工夫が必要です。たとえば、こういう使い方を意識しています。
- 「最新の法令に基づいているか自分で必ず確認する」前提でAIに質問する
- 就業規則や雇用契約書の固有の条件をセットで伝えてから聞く
- AIの回答をそのまま顧問先に転送せず、一度自分の言葉で噛み砕いてから伝える
顧問先30社のうち、給与計算をまだ手作業でやっている会社が5社ほどあります。そのうち2社は従業員が20人以上いて、毎月の給与計算に相当な時間を使っています。そこへの業務効率化の提案もしているのですが、「AIって難しそう」という先入観が根強くて、なかなか前に進みません。
そういう会社の担当者にこそ、今回の利用時間47.3%増という数字を見せたいと思っています。難しい話ではなく、「スマホでChatGPTを使っている人がこれだけ増えた」という事実は、感覚的に届きやすい。そこを入り口にして、実務への活用を一緒に考える流れに持っていきたいというのが、今の私の算段です。
1日あたりのスマホ利用時間が5時間43分という数字も、改めて見ると多いですね。私も通勤の電車で確認するのがChatGPTになってから、情報収集のスピードが変わりました。ただ、調べたことを鵜呑みにせず、e-Govや厚労省のサイトで一次情報を確認する癖だけは、これからも崩さないようにしようと思っています。