先週、Wiredのある記事を読んで、しばらく頭から離れなかった。
フォードが「Ford Energy」という子会社を立ち上げた、という話だ。EVバッテリーをつくるはずだった工場を転用して、電力貯蔵システム(BESS)を売る事業に軸足を移すという。この発表だけで株価が一日で13%も上がったらしい。
フォードは昨年末、EVプログラムに対して195億ドルという巨額の評価損を計上している。つまり、ここまで積み上げてきた戦略をほぼ捨てた。それでも、方向転換を明確にしたとたんに市場が評価した。
これを読んで最初に思ったのは、自分たちの仕事に似ているな、ということだった。
営業DXの文脈でも、「始めたプロジェクトが思ったように進まない」という話は日常茶飯事だ。ツールを導入したが現場に使われない。データは集まったが活用できていない。そういう状況で、経営陣への説明をどうするか、というのが自分の仕事の一番の難所になる。
フォードの場合、EV事業そのものの失敗を認めつつ、「でも蓄積したバッテリー技術はエネルギー貯蔵に転用できる」という筋書きをつくった。工場も技術も人材も、ゼロにはなっていない。視点を変えて価値を再定義した、ということだ。
経営陣への説明でこれをやるのは、思っている以上に効く。「うまくいきませんでした、見直します」ではなく、「ここで得た知見をこう使います」に変換できるかどうか。稟議を通す技術というより、経営への翻訳の技術だと思う。
フォードがエネルギー事業に入ったのは、単なる思いつきじゃない。AIデータセンターの急増が背景にある。データセンターは電力を大量に消費する。蓄電システムへの需要が急増していて、そこに連邦政府の税制優遇も重なっている。GMもリドウッドマテリアルズと組んで同じ方向に動き始めた。
要するに、「AIが電力を食う」という事実が、自動車メーカーを電力会社に変えつつある。
自分たちの業界に置き換えると、AIツールの導入が進めば進むほど、社内のデータ管理やセキュリティ要件の話が必ずセットでついてくる。うちでも、ツール選定の議論になると「データはどこに保存されるのか」「社内システムとの連携で情報漏洩リスクはないか」という話が毎回出る。これ自体は正しい問いなんだけど、そこで止まってしまうことも多い。
フォードの話で言えば、BESSはデータセンターのバックアップ電源にもなる、という部分が印象的だった。主役じゃなくていい、インフラの一部として機能する、という設計だ。DXツールの社内展開でも、「全社で使う主役ツール」を探すより、「既存の業務フローに静かに組み込めるもの」のほうが定着しやすい、という実感がある。
大きな変革を掲げるより、小さく機能する仕組みを積み重ねる。フォードがEVを諦めてBESSに転じたように、自分も「次の四半期どう動くか」を少し見直すタイミングかもしれない。
来週、部下の一人が現場向けのAIツール活用レポートをまとめてくれる予定だ。その内容を、経営陣への次の説明資料にどう組み込むか、フォードの「転換の見せ方」を参考にしながら考えてみるつもりだ。
フォードが「Ford Energy」という子会社を立ち上げた、という話だ。EVバッテリーをつくるはずだった工場を転用して、電力貯蔵システム(BESS)を売る事業に軸足を移すという。この発表だけで株価が一日で13%も上がったらしい。
フォードは昨年末、EVプログラムに対して195億ドルという巨額の評価損を計上している。つまり、ここまで積み上げてきた戦略をほぼ捨てた。それでも、方向転換を明確にしたとたんに市場が評価した。
「撤退」ではなく「転換」として見せられるか
これを読んで最初に思ったのは、自分たちの仕事に似ているな、ということだった。
営業DXの文脈でも、「始めたプロジェクトが思ったように進まない」という話は日常茶飯事だ。ツールを導入したが現場に使われない。データは集まったが活用できていない。そういう状況で、経営陣への説明をどうするか、というのが自分の仕事の一番の難所になる。
フォードの場合、EV事業そのものの失敗を認めつつ、「でも蓄積したバッテリー技術はエネルギー貯蔵に転用できる」という筋書きをつくった。工場も技術も人材も、ゼロにはなっていない。視点を変えて価値を再定義した、ということだ。
経営陣への説明でこれをやるのは、思っている以上に効く。「うまくいきませんでした、見直します」ではなく、「ここで得た知見をこう使います」に変換できるかどうか。稟議を通す技術というより、経営への翻訳の技術だと思う。
AIとエネルギー、その接続を自分ごとにする
フォードがエネルギー事業に入ったのは、単なる思いつきじゃない。AIデータセンターの急増が背景にある。データセンターは電力を大量に消費する。蓄電システムへの需要が急増していて、そこに連邦政府の税制優遇も重なっている。GMもリドウッドマテリアルズと組んで同じ方向に動き始めた。
要するに、「AIが電力を食う」という事実が、自動車メーカーを電力会社に変えつつある。
自分たちの業界に置き換えると、AIツールの導入が進めば進むほど、社内のデータ管理やセキュリティ要件の話が必ずセットでついてくる。うちでも、ツール選定の議論になると「データはどこに保存されるのか」「社内システムとの連携で情報漏洩リスクはないか」という話が毎回出る。これ自体は正しい問いなんだけど、そこで止まってしまうことも多い。
フォードの話で言えば、BESSはデータセンターのバックアップ電源にもなる、という部分が印象的だった。主役じゃなくていい、インフラの一部として機能する、という設計だ。DXツールの社内展開でも、「全社で使う主役ツール」を探すより、「既存の業務フローに静かに組み込めるもの」のほうが定着しやすい、という実感がある。
大きな変革を掲げるより、小さく機能する仕組みを積み重ねる。フォードがEVを諦めてBESSに転じたように、自分も「次の四半期どう動くか」を少し見直すタイミングかもしれない。
来週、部下の一人が現場向けのAIツール活用レポートをまとめてくれる予定だ。その内容を、経営陣への次の説明資料にどう組み込むか、フォードの「転換の見せ方」を参考にしながら考えてみるつもりだ。